<第66号> サプライチェーン2
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グローバル市場開拓 メルマガ
<第66号>
サプライチェーン2
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こんにちは
グローバル市場開拓メルマガ 発行責任者の牧野好和です。
完成されたものは美しいです。
芸術品だけでなく、工業品も美しいです。
高級車の美しさ、高級時計の美しさに、人は見せられます。
iPhoneは、高級品でない家電製品の分野で洗練された美しいデザインを実現しました。
美しいデザインは見た目のシンプルさと、中身の奥深さを兼ね備えていると思います。
高級車も、高級時計も、iPhoneも、中身は細かい部品でできています。
車はなぜ動くか、時計はなぜ正確な時を刻むことができるのか、
デジタル信号はなぜ演算したり記録したりすることができるのか?
一つ一つを細分化していくと、原理原則はすべてシンプルです。
白は光を反射し、黒は光を透過し、その他の可視光は特定の波長の間にあります。
電流を流すと特定の色に発光する色素があります。
振り子は振り幅に関わらず左右に触れている時間は一致します。
物質にはエネルギーがあります。
金属は放熱性と導電性に優れています。
樹脂は絶縁性に優れていますが熱に弱いです。
セラミックは放熱性と絶縁性に優れています。
半導体は導電性と絶縁性の両方の特性を持っています。
液晶は結晶と液体の両方の特性を持っています。
シンプルな事実とその中間にある事実を組み合わせて、複雑なものが出来上がっています。
そうやって出来上がった完成品は、簡単には真似ができません。
一流の料理人と同じレシピを使っても、
同じようなおいしい料理を作ることができないのと同様、
原理原則が分かっていて、同じプロセスを経ても、
技術がなければ実現できません。
化学構造が同じでも、できあがった化学品の性能が違うことはよくあります。
ジェネリック医薬品を選ばない方は、そのことをよく知っている方だと思います。
ジェネリックであろうとなかろうと、その医薬品の中間体は、
実は同じインドの企業で製造されていたりします。
ジェネリック医薬品を選ぶ方は、そのことをよく知っている方だと思います。
青色LEDは、今のところ、光の3原色がそろったこと以上に、
黄をマウントすることで白を実現したことに意味があります。
でもきっと将来、その役割は根本的に変わるでしょう。
地球上に存在しているものはそれほど変化していないのに、
あらたな発見が、地球も私たちの生活もどんどん変化させていきます。
美しいものの後ろには、たくさんのストーリーが隠れています。
世の中が便利になればなるほど、その後ろにあるストーリーは、
複雑に、そして見えにくくなっていきます。
さて、今号の内容です。
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<第66号> サプライチェーン2
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スマイルカーブと言う言葉があります。
上流と下流は儲かるが中流は儲からないという時によく使われます。
例えばスマートフォン。
スマートフォンで使われているコンデンサーなどの電子部品を製造するメーカーは
利益率が高いと言われています。
そしてスマートフォンとしての完成品を販売しているメーカーも利益率が高いと言われています。
一方で、部品を調達し、完成品にする組み立て工程は利益率が低いと言われています。
そのため、組み立て工程を担う企業は、規模を拡大することで収益を確保します。
大量に生産するために、大量の原材料・資材や大量の製造設備を使用するため、
調達する際に価格交渉力を持つことができます。
生産工程を効率化することで一製品あたりの原価を下げることができれば、
大量に生産した場合の総額としての原価低減効果は大きくなります。
こうして競争力を身につけてきたのが、富士康などのEMSやTSMCなどの半導体のファウンドリーです。
人件費が安かった頃の中国に生産を集中させ、大量の仕事を請け負うことで、
どんどん規模を拡大し、競争力を増してきました。
PC、液晶画面、スマートフォンなどは製品サイズが小さいため自動車のような物流コストがかかりません。
たとえ消費地に遠くても物流コストが大きくない限りは、生産をまとめた方がコストは削減できます。
その結果、競争力が高い中国で生産するEMSやファウンドリーに世界中の中間工程が集中しました。
そして今では、スマイルカーブの中間工程を担ってきた企業のプレゼンスが高まっています。
半導体生産はTSMCの一人勝ちと言われており、
中間工程に特化していた富士康の親会社である鴻海精密がシャープを買収。
最も利益率の低い部分に特化して競争力を身につけてきた企業が
着実に力をつけてきています。
米中貿易戦争で、多くの企業が生産拠点を中国から東南アジアに移していますが、
多くの場合、下流に近い一部の工程を移したのみで、サプライチェーン全体を移すことはできていません。
サプライチェーンは、複雑に絡み合っているので、サプライチェーン全体を移すことは簡単ではありません。
中間工程を担って力をつけてきたメーカーが、完成品メーカーだけでなく、
素材、資本財、生産財などの上流工程の企業も買収するのは時間の問題でしょう。
中国のサプライチェーンに依存しているのは
生産コストの安いアパレルなどの軽工業や、スマイルカーブの中間工程だけではありません。
COVID-19で大きな問題となったマスク不足は、医療用品の供給もすでに中国に依存していることを
浮き彫りにしました。
サプライチェーンは今やすべての人に関わるテーマとなりつつあります。
チェーンの一つ一つを紐解いて、BCP含めて対策をとることが求められるようになっています。
本号の内容は以上です。
来週も何卒よろしくお願い申し上げます。
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