<第37号>GDP その19カナダ

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グローバル市場開拓 メルマガ
<第37号>
GDP その19カナダ
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こんにちは
グローバル市場開拓メルマガ 発行責任者の牧野好和です。

カナダの大恩人とお話をしたとき、アメリカのことを、
The Statesと表現していたことが印象に残っています。
カナダ は北米であって、アメリカ合衆国ではありません。
アメリカの州はthe Statesの一つですが、カナダの州は、
the Statesには所属しておらず、
そのことが意味を持つということを改めて感じました。

一方、野球やアイスホッケーなどメジャーなスポーツリーグに、
カナダのチームが入っていますし、
カナダドルは米ドルとの連動性が非常に高く、
また、
カナダ経由でアメリカに入国する際に、トロントなどで
アメリカ入国審査があって、国内線のような感覚で、
カナダ ーアメリカ間を移動することになります。

その他、電子渡航認証ではアメリカのESTAと、
カナダのeTAは非常に似ています。
ビジネスでも、化学品の認可に関する
既存化学物質と新規化学物質の登録の制度など、
アメリカとカナダ とが類似の制度を持っている内容は
枚挙にいとまがありません。

同じ大陸にあるために、アメリカで禁酒法が制定されれば、
カナダの醸造所が栄え、カナダでタバコに大きな税金が
かけられれば、カナダの人々はアメリカでタバコを買うなど、
近くて似ているが故の、政策の難しさを抱えている国でもあります。

一方で、決定的な違いが、言語だと思います。
ルイジアナ州など、かつてのアメリカのフランス語は、
今や英語が公用語です。
カナダ の場合は、公用語は英語とフランス語の両方で、
ケベック州では主にフランス語が話されています。

カナダ人のアイデンティティに、
カナダ ・イギリス・アメリカ・フランス・カナダ
4つの国が見え隠れします。

AIの研究開発で世界トップレベルの技術を持つトロント大学。
AIに限らず、多くの大企業が研究機関をカナダ におきます。
日本の26倍以上、ロシアに次ぐ世界二位の広大な面積を持ち、
しかもその大半が森林。そして豊富な資源。

地球環境の保護の重要性が高まる中、資本ではなく、
新たな価値観が誕生しつつある中、カナダのプレゼンスが
高まっていくように思います。

今号は、欧米の大国の間にある、まだ発展途上の大国、
カナダについて取り上げさせていただきます。

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<第37号>
GDP その19カナダ
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1994年に発効し、四半世紀もの間、
カナダ 、アメリカ、メキシコ間の自由貿易を支えてきた
北米自由貿易協定(NAFTA)が、昨年12月10日、
「米・メキシコ・カナダ協定(USMCA)」として合意し、
生まれ変わります。

USMCAは、NAFTAの内容を基本的に踏襲していますが、
鉄とアルミニウムの70%が域内原産というルールについて、
原料の段階から北米で行われるという協定が
今後鉄鋼については7年間、アルミニウムについては
10年間かけて、3カ国で協議されることとなったそうです。

鉄については、新興国のプレゼンスが高まっています。
靭性が高く様々な加工ができる鉄はあらゆる産業で利用されており、
軽量で頑丈なアルミは航空機はじめ先端産業での応用が
広がっています。

素材の段階から域内での原産を維持するという方向は、
域内産業の対外依存度を下げることになりますが、
一方で限られた市場で垂直型の生産構造を維持することは、
最終製品の競争力を低下させることになります。

2016年、アメリカ・カナダ ・メキシコの3カ国で、
世界のGDPの25.8%を占めています。
今後も、「経済の規模」が重視される限りは、
この数字をいつまで維持できるか?が
ポイントになると思われます。

最終製品として最も大きな産業は自動車。
自動車メーカーはアメリカ国内と、
アメリカ国境沿いに集中しています。

USMAにおける、今後の鉄とアルミの交渉は、
資源大国である一方で、
世界的な製造業が少ないカナダにとって、
大きな意味を持つと思われます。

さて、カナダの一人当たりの名目GDPを、
アメリカ、日本と比較して見てみます。

カッコ内左がアメリカ、右が日本です。
※単位:ドル/JETROホームページより引用

2009年 40,935(49,028/41,014)
2010年 47,625(48,396/44,674)
2011年 52,272(49,811/48,169)
2012年 52,753(51,541/48,633)
2013年 52,726(53,046/40,490)
2014年 50,958(54,993/38,156)
2015年 43,616(56,770/34,569)
2016年 42,447(57,885/38,805)
2017年 45,224(59,984/38,344)
2018年 46,261(62,853/39,306)

前年比で見ていくと、日本と同じような上昇・下降が見られます。

2010年、カナダの輸出における対アメリカ輸出の構成比は
74.7%となっています。
また、2009年、カナダ経済の貿易依存度はGDPの28.6%と、
非常に高い水準です。

日本の輸出における対アメリカ輸出の構成比は、
2015年で20.1%となっています。
※データの年が揃っておらず申し訳ございません。

アメリカ経済がくしゃみをすると日本経済がかぜを引くと、
よく喩えられますが、
日本よりもはるかに対米貿易依存度が高いのがカナダです。

米国の経済・対外貿易政策・為替政策は、
いま激動の時代です。
今後大きな変化があるかも知れません。

現時点で、カナダ が対米貿易依存度を著しく低下させることは
難しいでしょう。
アメリカとの共存共栄を図りながら、カナダ独自の政策で、
いかにプレゼンスを高めていくか?
政策の舵取りが非常に難しいと思います。

一方で、対米貿易依存度が高いが故に、
今のところカナダの市場は日本企業にとっては、
米国と並べて見ていて大きな問題はなさそうです。

カナダ独自の規制や優遇に注目しながら、
北米という一つの市場で、
カナダを北米展開への有利な足掛かりにしている企業もあります。

乱暴な表現とも言えますが、カナダ については、
知っておいて損はなく、そして、今後10年かけて、
その重要性が高まっていくであろうと感じています。

本号の内容は以上です。
来週も何卒よろしくお願い申し上げます。

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2020-01-26 | Posted in Mail Magazine Back NumberNo Comments » 

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