<第34号> GDP その16フランス

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グローバル市場開拓 メルマガ
<第34号>
GDP その16フランス
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こんにちは
グローバル市場開拓メルマガ 発行責任者の牧野好和です。

近代資本主義の父と言われる渋沢栄一が、
パリ万博を訪れたことが、
日本に近代化の波をもたらすきっかけになりました。

明治維新後、日本に莫大な外貨をもたらした官営の模範工場、
富岡製糸場ではフランス人技師 ポール・ブリュナ氏によって
西洋の技術が取り入れられました。

明治初期に設立された司法官養成のための、
司法省法学校ではフランス語による法学教育が行われていました。

今、日本はアメリカ、中国に次ぐ世界第三位の経済大国です。
ヨーロッパのどの国よりも大きな経済規模を誇ります。
しかし、明治以降の日本の近代化のプロセスにおいて、
産業も、法による統治の手法もフランスから学んできたということについては
忘れてはならないと思います。

1800年代のフランスの人口はドイツやロシアよりも多く、
イギリスの倍以上でした。
1200年代から約300年の間、イギリスではフランス語が
英語と並ぶ公用語で、上流階級の間ではフランス語が
日常会話で用いられていました。
その後も、法律用語としてはフランス語がイギリスで使われ続けました。

パリ・コレクションやカンヌ映画祭、
ルーブル美術館やオルセー美術館、
LVMHやリシュモンが束ねるブランド
世界で最も多くの観光客が訪れる都市パリ
その他、哲学、音楽、文学など、
今もフランスが世界の文化的中心であることを
感じる内容はたくさんあります。

先進国の中で出生率が上昇している珍しい国です。

地方分権が進んでおり、大都市を抱えながらも、
地方都市は独自の施策で過疎や環境破壊などの問題に
取り組んでおり、日本の多くの都市が
ナントなどフランスの地方都市を視察に訪れています。

出身や家柄を重視する一方で、
結婚に対する考え方は、日本と異なっている、
あるいは、日本よりも大分先の考え方をしていると言えます。

国民一人ひとりが哲学的で、
自分自身の考え方をしっかりと持っています。
その一方で、YES、NOをはっきり言わないところもあります。

食を文化として尊重すること、
規模だけでなく、質にこだわることなど、
日本人が共感・そして憧れを抱く考え方も持っています。

インターネットが普及する中、
「つながらない権利」をはじめとした、
ネット社会独自の課題に対する法整備も他国に先駆けて
取り組んでいます。

フランスは、今の世界の秩序にすべて迎合することなく、
自国独自の姿を追求しながら、国際社会に影響を与え続けている
国と言えるかもしれません。

さて、今号では、世界の文化的・精神的な中心、
フランスのGDPを見てみたいと思います。

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<第34号>
GDP その16フランス
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フランス資本の企業には、日本にも馴染みの多い企業が並びます。

ルノー、プジョー・シトロエンを擁するPSAグループ、
食品大手のダノン、化粧品大手のロレアル、医薬品大手のサノフィ、
保険大手のアクサ、航空機大手のエアバス、水メジャーのヴェオリア、
タイヤ大手ミシュラン、石油大手トタル、
電機大手のシュナイダー・エレクトリックなど、
挙げればキリがありません。

一方で、政府が民間資本に積極的に介入していることも
ルノーと日産の関係で近年話題に上がりました。
ルノーの筆頭株主は今もフランス政府であり、
エール・フランスの筆頭株主もフランス政府です。
またフランスの国鉄(SNCF)も民営化されていません。
フランスは交通についてはインフラだけでなく産業に対しても、
大きな影響力を持ち続けています。

見方を変えれば、政策が経済に対して、
より直接的な影響を与えやすい部分があると言えます。

2018年11月にはマクロン大統領が炭素税の引き上げを表明し、
ガソリン価格の高騰に反発した国民によって大規模なデモ
が発生し、長期間にわたって続きました。

さて、フランスの一人当たり名目GDPの推移をみてみます。
ドイツ(左)と日本(右)の一人あたり名目GDPを括弧内に記載して、
比較したいと思います。

※単位:ドル/データ:JETROホームページより引用
2009年 43,176(42,576/41,014)
2010年 42,182(42,641/44,674)
2011年 45,416(46,853/48,169)
2012年 42,371(44,089/48,633)
2013年 44,145(46,545/40,490)
2014年 44,616(48,219/38,156)
2015年 37,938(41,415/34,569)
2016年 38,253(42,461/38,805)
2017年 40,046(44,771/38,344)
2018年 42,878(48,264/39,306)

ドイツと比べてフランスは製造業のウエイトが低く、
貿易依存度が低いと言われています。

リーマンショック後、ドイツは比較的早く経済を立て直しましたが、
フランスは他のEU同様、回復までに時間ががかかりました。
ドイツと比べて輸出が少ないことがその一因であると言われています。

そして、マクロン政権の政策も、貿易依存ではなく、内需重視です。

世界経済のリスクに対する耐性を高めていくことが、
今の政権の目指す姿と思いますが、
先述の通り、フランスは構造的に政府の企業への影響力が強く、
アメリカなどのように人材も流動的ではありません。

フランスという限られた国土・人口という資源の中で、
内需を高めていくためには、
国内で新たな産業が生まれ、発展していく土壌が作られることが
不可欠であると思われます。

その点、パリには駅舎を改造したインキュベーション施設「Station F」が
誕生し、フランス国内だけでなく各国から、
テック系のベンチャーが集まりはじめています。

ソフトバンクによって買収されたペッパーがフランス資本企業だった
ことは有名ですが、フランスには尖った技術を持つ新興企業が
すでにいくつか、誕生しています。

フレンチ・テックと言われるこれらのベンチャー企業を、
今後多数輩出していき、
ヨーロッパにおけるシリコンバレーのような存在感を
示し、積極的に外資も呼び込んでいくことが、
フランスの内需拡大にとって重要な成功ファクターになると思われます。

歴史・文化と並んで、最新テクノロジーも、
これからのフランス市場を見る上で重要なキーワードとなることは
間違いありません。

今号の内容は以上です。
来週もよろしくお願い申し上げます。

2020-01-05 | Posted in Mail Magazine Back NumberNo Comments » 

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