<第33号> GDP その15ドイツ

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グローバル市場開拓 メルマガ
<第33号>
GDP その15ドイツ
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こんにちは
グローバル市場開拓メルマガ 発行責任者の牧野好和です。

日本では最近、就職先として大企業よりも
ベンチャー企業や中小企業を選択する学生が増えてきました。

上昇志向や安定志向といった言葉が使われ、
若者側のモチベーションの変化として説明されることが多いですが、
私は必ずしもそれが正しいとは思いません。

大企業でなければできない仕事、
「大企業だからこそ」の教育プログラムなど、
大企業の方が人材育成環境が整っていると思いますが、
そうやって大企業の恵まれた環境で育成された人材といえども、
今や、社会で即戦力になるとは限りません。

むしろ中小企業で現場力を身に付けた人材の方が、
幅広い業務に対応できる場合が多々あります。

分業が進めば進むほど、大企業の仕事は専門特化していきます。
大企業では、若手の段階で、広範な業務に従時できることは、
まれだと思います。

一方で、中小企業では若いうちから、
一人二役も三役もこなさなければならず、
しかもその一つひとつの役割の責任が重い、
といったことがよくあります。

そして、技術の急激な変化で、ベンチャー企業が大企業のシェアを
あっという間に奪うことができる今、
大企業といえども、絶対潰れないということはあり得ません。

大企業にとっては、潰れないことを優先する限り、
「終身雇用」の優先順位はどんどん下がっていくでしょう。
むしろ、大きくなることを目指さない企業の方が、
持続性があり、「終身雇用」の優先順位は高いと思います。

人生100年時代を考えて、将来を冷静に見据えているのは、
すでに社会人である我々よりも、むしろ
これから社会人になろうという若者たちであると思います。

若者のモチベーションの変化として片付けてしまうと、
大企業にとって優秀な人材を獲得することは難しくなると思います。

そして、ドイツでは、中小企業は経済の屋台骨を支えるという意味で
ミッテルシュタンドと呼ばれ、尊敬されています。
大企業よりも中小企業に就職することを好む若者が多いこと、
ヒドゥン・チャンピオンと呼ばれる、世界で高いシェアを持つ
中小企業が多いこと、
大企業でも所有と経営が分離されておらず家族経営が多いこと
などが、ドイツの一つの特徴です。

実は、このドイツの特徴、日本企業が本来持っている姿と
非常によく似ています。

ドイツの姿を見ると、これからの日本企業の進むべき道が
見えてくるように思います。

今号は、日本と同じく、敗戦からの経済復興を遂げた、
貿易黒字大国ドイツのGDPについてご紹介します。

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<第33号>
GDP その15ドイツ
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経済産業省の通商白書2013では、ドイツの中小企業
「ミッテルシュタンド」について、次のように説明しています。

<戦略上の特徴>
○差別化された製品への特化
○顧客との密接な関係とアフターサービスの重視
○ブランド・品質重視
○イノーベーション・R&D投資
○従業員との長期的関係
<属性>
○BtoBが多い。
○比較的古い産業に多く、ICT分野は少ない。
○地方に分散、地方に根を張っている。
○家族所有・家族的経営
(通商白書2013P134)

さて、上記の内容をみて、「新鮮」とか「驚き」
といった感覚になる方は少ないと思います。
どれも一つひとつは当たり前のこと。
でも一つひとつがすべて奥が深いです。

本号でご説明することは割愛させていただきますが、
通商白書2013には、この一つひとつが、
事例を挙げて説明されており、大変興味深いです。
ぜひご一読いただければと思います。

一つ、論点を絞らせていただきたいのは、
「ドイツ企業は企業数に占める輸出企業の割合が高い」
(同P134)
という点です。
人口が日本の約6割のドイツにとって、
そして周辺国と陸続きのドイツにとって、
市場はドイツ国内だけを意味しないことは容易に理解できます。

EU、シェンゲン協定、統一通貨ユーロといった仕組みが、
その高い輸出比率を支えていることも理解できます。

逆にいえば、良い製品を作り続けることと、
市場を拡大し続けることが、経済大国ドイツの地位を維持する上で、
不可欠であると言えます。

このことを考えると、
EU内でのドイツとその他の国との軋轢が起こっていることの
理由も理解できるような気がします。

またドイツの今の経済的な安定は、1990年台にシュレーダー首相に
よって行われた構造改革「アジェンダ2010」の効果が大きいと
言われています。
この「アジェンダ2010」には、労働市場の柔軟性を高め、
年金給付を事実上削減するという内容が含まれていました。

そして、その後の成長が、
外国人労働者によって支えられてきたことは
周知の通りです。

日本が今目指してる姿と似ていると感じるのは
私だけでしょうか?

さて、ドイツの一人当たり名目GDPの推移です。
日本の一人あたり名目GDPを括弧内に記載して、
比較したいと思います。
※単位:ドル/データ:JETROホームページより引用

2009年 42,576(41,014)
2010年 42,641(44,674)
2011年 46,853(48,169)
2012年 44,089(48,633)
2013年 46,545(40,490)
2014年 48,219(38,156)
2015年 41,415(34,569)
2016年 42,461(38,805)
2017年 44,771(38,344)
2018年 48,264(39,306)

この10年の一人当たり名目GDPはドルベースでは
日本と拮抗しています。
むしろ、所得水準というよりも、対ドル為替の変化が
差として現れているように感じます。

一方で、注目すべきは、
ドルベースでの一人当たり名目GDPが、
ドイツの場合、比較的安定的に成長していることです。

ユーロは円よりもドルに対して安定していること、
上記期間、日本の人口と違ってドイツの人口は少し増えていることを
差し引いたとしても、
中小企業のグローバル化が、国民一人当たりの所得水準の向上に、
少なからぬ影響を与えていることを感じます。

日本の中小企業がドイツの中小企業の技術よりも
劣っているとは決して思いません。
なぜドイツの中小企業はグローバル市場開拓が得意で、
日本の中小企業はグローバル市場開拓が苦手なのか?

それには答えがあります。

このメルマガを通じて、ご説明を続けさせていただきたいと思います。

本号の内容は以上です。
来週も何卒よろしくお願い申し上げます。

2019-12-29 | Posted in Mail Magazine Back NumberNo Comments » 

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