<第32号> GDP その14エチオピア
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グローバル市場開拓 メルマガ
<第32号>
GDP その14エチオピア
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こんにちは
グローバル市場開拓メルマガ 発行責任者の牧野好和です。
トマ・ピケティ著「21世紀の資本」に以下の記述があります。
『最近になって先進国に近づいたアジア諸国は、
どれひとつとして巨額の外国投資の恩恵は受けていない。
これは日本だろうと韓国だろうと台湾だろうと、
もっと最近では中国だろうと同じだ。
基本的には、こうした国はすべて、
物理資本への投資、それ以上に人的資本に必要な投資を
自力でまかなったのだ。
人的資本は最新の研究によれば、長期成長の鍵となる。
逆に、他国に所有された国は、
それが植民地だろうと今日のアフリカだろうと、
あまり成功していない。』
始めてエチオピアのアジス・アベバに降り立った時、
まわりは中国人ばかりでした。
到着の飛行機も、出発の飛行機も、空港も、
中国人ばかり。
中国は一帯一路に1260億ドルを投資して、
中国、ユーラシア大陸、アフリカ大陸を
陸路、海路で結ぶべく取り組んでいますが、
その中でもエチオピアはアフリカ大陸に
おける要衝に位置付けられており、
中国から大きな投資が入っています。
当時すでにエチオピアの潜在性は注目されていましたが、
その成長の背景に中国のプレゼンスを
感じざるを得ませんでした。
人口1億人を超え、かつ資源も豊富。
アフリカ最古の独立国で、
首都アジス・アベバには
アフリカ連合やアフリカ経済委員会の本部が
置かれています。
紛争が多発している地域に囲まれながらも、
連邦民主共和制に移行後も
政情は比較的安定しており、
ソマリアや南スーダンの紛争解決のために
重要な役割を果たしています。
エチオピアが今後、
他国資本の投資に成長を委ねるか、
それとも自力で成長を遂げるか、
それは、アフリカ全体の成長を占うような気がします。
今号は、人類のルーツが誕生したと言われており、
かつ世界最古の歴史を持つ国家、
エチオピアについてです。
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<第32号>
GDP その14エチオピア
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日本でエチオピアの産業というと、
多くの方がコーヒーを思い浮かばれると思います。
コーヒーだけでなく、花卉なども輸出額が大きく、
エチオピアも他のアフリカ諸国同様に
農業依存型の経済構造です。
一方で、人口1億を超える大国として、
工業製品の輸入量も多いため、
多額の財政赤字を抱える国でもあります。
2017年の輸出額は28.6億USドルに対して、
輸入は146.9US億ドルとなっており、
毎年輸出額の5倍以上の金額を輸入しています。
エチオピアの債務返済額は毎年GDPの
6割近くとなっており、
数字の面からは、
経済成長の潜在性以上に、
リスクが高い経済環境ということができます。
さて、エチオピアの一人当たりの名目GDPを
隣国のケニアと比較してみます。
今回もJETROホームページを参照しています。
カッコ内がケニアの一人当たりの名目GDPです。
(単位:USドル)
2009年 398(982)
2010年 361(1,039)
2011年 379(1,055)
2012年 493(1,239)
2013年 535(1,319)
2014年 613(1,431/推定)
2015年 703(1,453/推定)
2016年 777(1,559/推定)
2017年 817/推定(1,695/推定)
2018年 853/推定(1,857/推定)
1974年の帝政の廃止後から1991年のメンギスツ政権崩壊まで
エチオピアは社会主義政権でした。
エチオピアに限らずタンザニアなど
アフリカの大国で社会主義だった国は、
アフリカの中でも経済成長が遅れています。
一方で、それ故に、外資に国内資本が所有されていません。
アフリカ資本の2割が外国人に所有されていると言われている中、
エチオピアは長い間外資に開かれていなかったため、
大きな市場がまだ、手付かずのまま、眠っています。
そういった中で、今、エチオピアは外資の参入を奨励しています。
外資のノウハウを取り入れ、労働法などの制度も整え、
自力での成長に向けて、着実に取り組みを進めています。
今年(2019年)にはアメリカのリース会社が
金融サービス業としてはじめてエチオピア市場に参入しました。
それによって、工業化のための設備投資も進み、
経済の血液としての金融業が循環していくと思われます。
まさに巨大な市場が開かれるつつある状態にあると言えます。
ただし、現時点でエチオピアへの輸出も輸入も中国がNo.1であり、
エチオピアに投資をした中国資本が人民元で中国から
製品を輸入するという、いわゆる人民元決済圏が構築されています。
手付かずの市場がどのような形で開かれていくか、
エチオピアの政治に左右される要素が大きく、
日本にとっても重要な意味合いを持ってくると思われます。
GDP総額ではエチオピアはケニアに近づいており、
成長著しいケニアをも、GDP総額で抜くことは、
時間の問題と思われます。
我が国もJETROがエチオピアに事務所を開設し、
大企業だけでなく中小企業がビジネスを行うための
サポート体制を整えています。
エチオピアについては、市場環境が未成熟な中、
エチオピアにとって第四位の輸入相手国として、
オールジャパンとしてどのようにサポーティングインダストリーが
根付くための支援ができるかどうか、
といったことが重要であると思います。
オール・ジャパンの取り組みに関わることができた中小企業は、
将来エチオピアが自力で経済成長を遂げたときに、
アフリカ市場で大きなチャンスを手に入れることができると思われます。
本号の内容は以上です。
来週も何卒よろしくお願い申し上げます。