<第23号> GDP その5タイ
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グローバル市場開拓 メルマガ
<第23号>
GDP その5タイ
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こんにちは
グローバル市場開拓メルマガ 発行責任者の古白です。
立花隆+東京大学教養学部立花隆ゼミ著「二十歳のころ」
という本があります。
20歳の大学生が著名人を訪問し、
その方が20歳だった当時の思い出を、
インタビューするという企画です。
各界の70人にインタビューされていて、
全2巻で、生まれが早い方から順番にインタビュー内容が
掲載されています。
素晴らしい実績を残された方々が、
手探りで、そして必死に生きてきた多感な20歳当時の姿を、
臨場感を持って学ぶことができ、私が大好きな本です。
私が20歳の頃、何をしていたかな、と振り返ると、
毎日「今日はどうやって、何を、食べよう」って考えていたと思います。
1995年当時、学生はまだ貧しく、
私の住んでいた学生寮の寮費は月700円でした。
学生寮では寮食が出て、毎日食べても月5000円くらいだったと
記憶しています。
だから、月1万円くらいあれば、
何とか生きていくことができました。
寮生はほぼ全員、寮食を申し込んでいるのですが、
アルバイト等で食べられない寮生がいると、
寮食が残ってしまいます。
そこで、深夜2時の時点で寮食が残っていると、
誰でも残った寮食を食べてもいいというルールになっていました。
そのため2時になると寮生が一斉に食堂に来て、
みんなで残った寮食を食べます。
このことを私たちはハイエナと言っていました。
みんな貧しい中でも、そうやってお腹をいっぱいにして、
勉強はほどほどに、アルバイトに励んでいました。
そして貯めたお金で、バックパックで、
海外旅行に行くという寮生が多かったです。
当時のバックパックでの人気の行き先がタイでした。
2018年、日本を訪れる外国人は3,000万人を超えました。
東京も京都も大阪も外国人観光客で賑やかです。
しかし、タイを訪れる外国人観光客の数は、
2018年時点でも、まだ日本を上回っています。
さて、今号は、常に世界観光ランキングトップ10に
入っている、アジアの観光大国タイです。
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<第23号>
GDP その5タイ
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アジアの中でも、タイに
親近感をおぼえる日本人の方は多いと思います。
17世期から19世紀にかけて、東南アジア各国が
スペイン、オランダ、フランス、イギリス、オランダ、アメリカ等の
植民地となった一方で、タイだけは独立を守り抜きました。
日本と同盟関係にあったこともあり、
日本と歴史的につながりの強い国と言えます。
そして、今、タイは日本にとって東南アジアにおける
重要な経済のパートナーです。
タイに進出している日本企業は6000社を超えます。
大手自動車メーカーはタイで完成車を製造し、
東南アジア各国に輸出しています。
多くの場合、海外での自動車製造はノックダウン方式をとっていて、
主要部品は輸入をしていますが、
タイでの自動車生産の場合は、主要部品もタイで生産しており、
下請け構造によるサポーティングインダストリーが確立しています。
バンコク近郊のチョンブリー、プラナコンシーアユタヤ、
プラチーンブリ、チャチュンサオなどには、
産業クラスターとしての巨大な工業団地がいくつも存在していて、
外国資本の大きな工場が建設されています。
東南アジア向けの製品を開発するためには、
現地での開発が適している場合も多く、
バンコク北部にあるサイエンスパークには、
多くの外資企業が研究開発拠点を設けています。
そういった拠点では、チュラーロンコーン大学のような
優秀な大学との産学連携とも行われています。
さてそんな巨大な産業クラスターを持つタイの
一人当たりの名目GDPを見てみます。
(今回もJETROホームページを参照しています)
2009年 4,208ドル
2010年 5,605ドル
2011年 5,482ドル
2012年 5,850ドル
2013年 6,154ドル
2014年 5,933ドル
2015年 5,831ドル
2016年 5,970ドル
2017年 6,591ドル
2018年 6,992ドル
前号のマレーシアよりも一人当たりGDPが低く、
2018年のタイの一人当たりの名目GDPは
マレーシアの約64%の水準となっていて、
かなりの差があることが分かります。
タイは、歴史的に農業従事者が多く、
GDPにおける第一次産業の比率が高い国です。
その結果、第二次産業である製造業や
第三次産業であるサービス業の比率が低くなっています。
人口はバンコクに一極集中しており、
バンコクにはサービス業が集中、
バンコク近郊の工業団地には製造業が集中、
バンコクから離れるにつれて、農業地帯になっています。
バンコク近郊の工業団地もタイの現地資本ではなく
外資企業が多くなっています。
第二次産業もまだ外資への依存度が高い状況です。
そういった意味では、タイは伸び代の大きい国と言え、
タイが、中国のように生産拠点として外資からノウハウを吸収して、
世界的な競争力を持つ自国資本企業を多数生み出すことができれば、
タイ経済はさらに高い成長率で成長することになると思われます。
タイにはBOIと呼ばれる投資委員会が
外資からの投資奨励を判断する制度があります。
BOIはタイの産業が競争力を持つことができるよう、政策的に運用されていますので、
積極的に外資のノウハウを自国に取り入れることを狙っていると思われます。
タイにはすでに、大手財閥であるCPグループ、タイ・ユニオン、サハグループや
石油会社であるPTTなど世界屈指の企業が存在しています。
そして、今タイでもベンチャー企業がいくつか立ち上がっています。
自国のベンチャー企業、中小企業、大企業が産業を支える構造が
立ち上がった時、巨大な東南アジア市場を背景とした、
タイの存在感はますます大きくなっていくと思います。
市場規模と潜在性では、東南アジアでは
インドネシア、ベトナム、フィリピンが注目されがちですが、
タイの内需の発展もまだまだこれからです。
タイの一人当たりのGDPの伸びには注目していく必要があります。
本号の内容は以上です。
来週もよろしくお願いいたします。