<第11号>Distributorとの契約のポイント その7紛争解決

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グローバル市場開拓 メルマガ
<第11号>
Distributorとの契約のポイント その7紛争解決
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こんにちは
グローバル市場開拓メルマガ 発行責任者の古白です。

さて、Facebookを見ていたら、
日韓や日中の対立を煽るような記事がありました。

日本のメディアが伝えない真実ということで、
日本のメディアは中国や韓国にコントロールされている
といったようなことを、フランスのメディアが伝えているという
内容で、ユーチューブのリンクが貼ってありました。

思わずそのユーチューブをクリックして、
そのフランスのメディアを閲覧したのですが、
そのフランスのメディアのアナウンサーが話している内容は、
男女間の関係の問題であって、日韓関係や日中関係のことなど
一言たりとも触れていません。

そのフランスのメディアに、日韓や日中の対立を煽る映像と
そういった内容の日本語字幕が合成されて表示されています。
見事な合成技術で、捏造であることに気がつきません。

ニュースのなので、アナウンサーの発言は非常にわかりやすく、
多少でもフランス語がわかる人ならば絶対に騙されません。
でもフランス語と触れ合う機会がない人は、
日本語字幕をそのまま読んでしまい、騙されてしまうと思います。

日本の場合、英語人口よりもフランス語人口がはるかに少ないため、
フランス語を理解できないことを想定して、
こういったフェイクニュースを捏造するのだと思います。

何のためにこんなフェイクニュースを作成して流布させるのか、
作成された方の意図は分かりませんが、
すごく身近にフェイクニュースが氾濫していることを感じ、
大変危険だと感じました。

正しい情報を入手するために、
正しい知識を身につけていくことが、
これまで以上に重要になると思いました。

さて、第11号の内容です。

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<第11号>
Distributorとの契約のポイント その7紛争解決
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国際取引の場合、取引の相手方と商習慣が異なり、
また、それぞれの国内で普段から遵守している法律の内容も異なります。

通常、契約締結段階では両者の関係は良好なため、
紛争解決手法の重要性を感じることはあまりありません。
しかし、いざ、取引が始まると、お互いの商習慣の違いや国内法の違いから、
解釈の相違が生まれることが少なくありません。
契約締結当時、両者がどれだけ友好的であったとしても、
取引を重ねるにつれて両者の見解の相違が明らかになり、関係の溝が深まり、
紛争に発展することといったことがないとは絶対に言い切れません。

もし、紛争になった時に、どの法律に基づいて解釈し、
どの手法で紛争を解決するかといったことは、
大変重要な意味を持つことになります。

そのため契約締結段階で紛争解決手法を合意しておくことは大変重要です。

この紛争解決手法については、多くの場合
「準拠法」と「紛争解決地」について合意されることが行われています。

例えば日本とアメリカの企業との間で契約を締結する場合、
アメリカの場合は設立準拠法は州ごとで異なるため、
もし相手方がデラウェア州の企業の場合、
準拠法が日本法かデラウェア州法か、
紛争解決地は日本の裁判所か、デラウェア州の裁判所か、
といったことが交渉では行われています。

通常は交渉の力関係で、日本企業の方が優位な場合は
日本法で東京地方裁判所で、といったことが合意できるのですが、
お互い力関係が対等な場合、お互い譲らずに合意できないということも起こり得ます。
他の内容で合意したにも関わらず、紛争解決条項で合意できないため、
契約が締結できないというのは大変残念なことです。

そのため、そういった時に、「被告地主義」といった手法をとることがあります。
被告地主義とは文字通り、訴えた方ではなく訴えられた方の国の
裁判所を管轄裁判所とする合意であり、訴えた方にとって不利となります。
そのため、「被告地主義」には、折衷案として合意を導く効果だけでなく、
安易に相手方を訴えることに対する牽制の効果もあります。

一方、国際紛争の解決手法は話し合いや裁判だけではなく、
斡旋、調停、仲裁といった手法もあります。

裁判の場合、判決がそのまま執行力を持つという点で有効な手段であることは
間違いありませんが、通常は裁判には時間がかかり、費用もかさみます。
まして、国をまたいで裁判を行うことになった場合、
さらにそのための時間も費用もかかることになります。

そこで国際契約では、仲裁が紛争解決手法として選ばれることが多いです。
仲裁の場合、裁判と違って一審制のため紛争解決が長引き、
訴訟費用が膨らむといったことを回避することができます。
また、裁判と違って非公開のため、企業秘密が相手国内に漏れないというメリットもあります。
法律の専門家である裁判官ではなく、特定分野について専門知識をもった専門家を
仲裁人として選定することもできます。

そして、仲裁に関する国際条約の加盟国間では仲裁の結果が
法的執行力を持つことが合意されているため、
裁判同様、執行力を確保することができます。

さらに仲裁の場合、仲裁地を第三国で合意することもできます。

例えば、日本の企業とアメリカの企業で契約を締結する場合に、
仲裁地をシンガポールという形で合意することもあります。
もちろん、日本の企業にとってもアメリカの企業にとっても
紛争解決のためにわざわざシンガポールまで
出張するといったことは物理的には不可能と思われます。

そのため、こういった第三国を仲裁地で合意するようなケースは、
紛争を牽制して、できる限り話し合いで解決することを導く効果もあると言えます。

ただし、もし紛争解決手法として仲裁を選択する場合は
当事者間で「紛争の解決は仲裁による」ということを
あらかじめ合意しておくことが必要となります。

紛争が起こってからの合意は難しいため、契約書締結段階で
仲裁条項を合意しておくことが不可欠と言えます。
この仲裁条項については日本商事仲裁協会等の国際的な仲裁機関が
モデル条項を公表しているため、その条項をそのまま使っておけば
間違いはないと言えます。

契約書を締結することそのものが契約の目的ではなく、
契約書は、お互いの合意内容を書面化しておくことで
言った言わないを防ぐとともに、
もし紛争になった時の合意内容を証明するためのものです。

そういった意味でも、紛争解決のための条項の合意は、
取引内容合意と同じくらい重要であると思います。

2019-07-28 | Posted in Mail Magazine Back NumberNo Comments » 

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