<第10号>Distributorとの契約のポイント その6報告

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グローバル市場開拓 メルマガ
<第10号>
Distributorとの契約のポイント その6報告
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こんにちは
グローバル市場開拓メルマガ 発行責任者の古白です。

7月1日、経済産業省は
7月4日より韓国をホワイト国から除外し、
フッ化ポリイミド、高純度フッ化水素、レジストの3品目について
リスト規制の対象に追加することを発表しました。

これにより、対象3品目のメーカー、およびもし商社経由で輸出されている場合は当該商社は、
毎回経済産業省宛に輸出許可申請をしなければならないことになり、
大変なことになります。

さらに、対象3品目以外も輸出貿易管理令別表第1の16項に掲げられた貨物について、
キャッチオール規制の対象になることになりますが、
輸出貿易管理令別表第1の16項には
ほとんどすべての鉱工業品が対象製品となっているため、
韓国向け輸出に携わっているほとんどの企業で、
現在輸出している製品が兵器の開発等に用いられるおそれがないか、
確認する必要があります。

もちろん、普段から貿易を行っている企業は、
仕向け地にかかわらずこういった手続きをする体制は整えていると思いますが、これまでホワイト国にしか輸出していなかった企業などは、
そもそも「該非判定」のノウハウを保有していないかも知れません。

今後はリスト規制貨物だけでなく、
16項該当貨物、すなわちほとんどすべての鉱工業品の輸出で
1)対象貨物が兵器の開発等に用いられるおそれがないか
2)需要者が兵器の開発などを行う(行った)またはユーザーリストに該当していないか
を自社で判定する必要があります。

貿易をしている企業数は少なくありません。
今回の韓国向け輸出貿易管理規制の強化は、
改めて安全保障貿易管理の重要性を認識する上で、
重要なきっかけになっていると思います。

さて、第10号の内容です。

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<第10号>
Distributorとの契約のポイント その6報告
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本メルマガ第4号で、DistributorとCommission Agentの違いについてご説明しました通り、
Distributorは売買に介在します。

そのため、Distributorが購入した製品を、
テリトリー内のどの顧客にいくらで販売するかは、
輸出側にとって把握できていないケースが多いです。

しかしながら、最終需要者について把握する必要がある、いくつかの理由があります。

その一つが、安全保証貿易管理です。

日本が世界に誇る測定器メーカーであるミツトヨ社の、核開発に転用可能な3次元測定器が
2004年にリビアで見つかって大問題になったミツトヨ事件が有名です。

マレーシア向けに輸出された3次元測定器が第三者を経由してリビアに流れたことが
発覚し、社長含めた役員が有罪判決を受けました。

この事例からもわかるように、問題となっているのは輸出の「仕向け地」ではなく
「最終需要地」です。
自社が輸出した外為法上の規制貨物が、万が一Distributorを経由して、
さらに第三者の手にわたって、その後懸念国に流れることになったら、
刑事責任に問われることになります。

そして企業として刑事責任だけでなく社会的責任に与える影響も大きいです。
世界に誇るブランド力をもつミツトヨ社のような超一流の企業が、
今もホームページ上で当時に事実を公表し、二度と同じ過ちを犯さないようにという
体制を構築して、社会的信頼の回復に努めています。

万が一、自社の輸出した製品が、大量破壊兵器の開発に実際に使われるような
ことが起こった場合は、取り返しのつかないことになります。

もし輸出貿易管理令別表第1の1項〜15項、または
輸出貿易管理令別表第2に該当する貨物を輸出される場合は、
最終需要者の把握はマストです。
キャッチオール規制(別表第1の16項)の場合でも、同様に、
最終需要者の把握は絶対に行わなければならないと言えます。

そして、二つ目がテリトリーとの関係です。

例えば、アジア向けに輸出を行う際にシンガポールと香港にDistributorを任命する
といった事例はよくあります。
特に、マレーシアやインドネシア向け製品は、シンガポールのDistributorを
通じて販売する事例が多いのですが、稀にマレーシア向けで
香港のDistributor経由の製品が流れてくることがあります。
香港のDistributorに悪意があったわけでなく、アジアの市場は複雑で密接に絡み合っているので、
こういったことは避けられないと言えます。

こういった問題が起こった場合は、
香港の代理店の販売先がどこで、どのようなルートで販売した製品が最終的にマレーシアに流れているかを
把握して、迅速に対応を行う必要があるのですが、

いざこういったことが起こった場合、
通常は、シンガポールのDistributorと香港のDistributorは、当然、対立関係になってしまい、
それが解決をさらに困難にさせることになります。

その時に、日本側で

それぞれのDsitributorの販売先とその価格をあらかじめ把握できている場合と
把握できていない場合で

大きな違いがあります。

他にも、価格や在庫に関する政策の構築や流通チャネルを検討する上でも、
Distributorによるテリトリー内の販売状況を把握することは重要な意味を持ちます。
さらに場合によっては税法上の問題点が生じる可能性もあります。

ビジネスが始まった後で、Distributorに、現地の販売先、販売価格、販売価格等の
細かい情報が欲しいとリクエストしても、「もしかしたら直接販売されるのでは?」と
警戒されてしまう恐れがあります。

Distributorとの契約時点で、きちんと趣旨を説明し、
契約書内に「報告義務」を定めておくことが望ましいと言えます。

2019-07-21 | Posted in Mail Magazine Back NumberNo Comments » 

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