<第7号>Distributorとの契約のポイント その3 為替リスク

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グローバル市場開拓 メルマガ
<第7号>
Distributorとの契約のポイント その3 為替リスク
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こんにちは
グローバル市場開拓メルマガ 発行責任者の古白です。

2006年6月から12月まで、ニューヨークに滞在させていただきました。


アメリカはリーマンショック前で、好況に沸いていました。

カリフォルニアに出張した際、シリコンバレーからサンフランシスコ国際空港まで、

リムジンにお世話になったのですが、リムジンの運転手さんは、

住宅価格が上がっているから銀行がお金をたくさん貸してくれるから、

働かなくても生きていけるんだ、とおっしゃっていました。


本気ではなかったと思いますが、そういったセリフから余裕を感じました。


当時マンハッタンで、マクドナルドに入ると、店員さんがたくさん立っているけど、

働いているのはわずかで、客の行列ができていたり、

駐車場から車を出してもらう際に、チップを1ドルしか渡さないと、

すごくアクセルをふかして荒い運転で持ってきたりといったことを経験して、

好景気っていうのは、顧客は大事にされない時代のことを言うんだな、と感じました。


さて日本も好景気が続いています。

IT化が進み、生産性向上が唱えられていますが、仕事はどんどん複雑化しています。

そして、人手不足で、誰もが忙しい状況が続いています。


景気には、少しずつ陰りが見え始めています。

リーマンショックのような、景気の急降下の再来を防ぐためにも、

こんな時こそ、顧客第一で、おもやりをもったビジネスに、

取り組んでいくことがとても重要だと思います。


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<第7号>
Distributorとの契約のポイント その3 為替リスク
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リーマンショック後、ドル円の為替は

1ドル105円近辺から、90円以下の水準に

一気に円高になりました。

わずか3ヶ月の間に、15円以上円高になったことになります。


実はリーマンショック前の2007年6月には1ドル120円を超えていたので、

すでに、2008年9月のリーマンショック前までに、じわりじわりと

円高が進んでいたことになります。


この時、為替リスク対策ができていた輸出企業と、

為替リスク対策ができていなかった輸出企業で大きく違いが現れました。


TTB(Telegraphic Transfer Buyingの略で輸出するために外貨を買うためのレート )で

1ドル100円で設定していた企業にとって、リーマンショック時に突然90円になると、

それだけで10円の為替差損が発生してしまいます。


これが、わずか3ヶ月の間に、もっと大きな変化が生じました。

3ヶ月という期間は、船便だったら多くの場合、リードタイムとして必要な期間です。

つまり、1ドル100円以上の為替前提で受注した取引が、

出荷時には1ドル90円以下になっているというケースが多発しました。

通常の輸出企業にとっては対策を講じるすべがなく、ほとんどのケースで10%以上の

大きな為替損失を発生させることになりました。


ところが、この大きな為替の変動に対して、リスクヘッジができている輸出企業もありました。

具体的には、

1)ドル建てではなく、円建てで販売する

2)ドル建てだが、出荷時のドル円為替に応じて価格を決定する

といったリスクヘッジをとっていた企業です。


半導体製造機器メーカーや一部のロボットメーカーなど、単価が高くてかつ技術的差別化が大きい

企業は円建てで取引をしていたようです。

円建てで販売していた場合、自社の為替損失はゼロです。

そのかわり、顧客が為替損失を全額被ることになります。


一方、2)の手法は利益率が低いが大量に製品を販売する、

大手商社によって行われていたようです。

出荷時の為替を適用するという手法は、

L/C(Letter of Credit/信用状)の取引ではできません。

T/T(Telegraphic Transfer /電信送金)でかつユーザンス取引(B/Lの日付から一定期日後の支払い)

といった条件でないと、出荷時の為替でドル建て価格を決定するということはできません。

初めての顧客に対するスポット取引でこういった合意をすることは大変難しいと言えるでしょう。


そこで、こういった為替リスクをヘッジする上でも、海外販売代理店の役割がここでも重要となります。

為替の短期的な変動に対して、海外販売代理店がクッションして一部の損失を吸収してくれることができれば、

末端顧客は為替の変動に関わらず従来通りの価格で購入でき、

かつ、取引当事者もすべて赤字を免れるといったことも場合によっては可能となります。


輸出ビジネスに長けていて、全世界に販売網を持っている商社だからこそ

リーマンショックのような突然訪れた急激な為替変動にもしっかりとリスクヘッジ出来たのでしょう。

円高は長期的に見れば輸出競争力を奪うことになります。

短期的な急激な円高は、それだけでなく、1回の取引を赤字化させるリスクをはらんでいます。


そして長い間円安誘導が続いていましたが、最近再び、円高傾向が取り沙汰されています。


信頼できる海外代理店と、為替リスクについてしっかりと交渉し、合意ができているかどうか、

見直してみるべきタイミングであると思います。

 

2019-06-30 | Posted in Mail Magazine Back NumberNo Comments » 

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