Culture
ロシュディ・ゼム監督のショコラ。実在した黒人道化師をモデルにした映画です。
白人パートナーとのコンビでブレイク。
白人に蹴られたり、罵られたりする役柄と、人間としてのプライドとの間の葛藤がストレートに表現されています。時は20世紀初頭。奴隷制度は当然なくなっていたと思いますが、人種差別は根強く残っていた時だと思います。主人公のショコラ以外にも、数え切れない方々が、人種差別で辛い思いをされてきたと思います。
私が子供の時はまだ南アフリカではアパルトヘイトが行われていました。今も、世界で人種差別は100%なくなったかというと決してそんなことはありません。ロヒンギャの方々のように、現実に今、故郷に帰ることができないという大変つらい現実に直面している方々もいらっしゃいます。
人には、排他的に振る舞うことで、自分を守ろうとする習性があると思います。常に多数派に身を置くことによって安全を選ぼうとする習性があると思います。日本人が日本以外の国に行けば少数派。外国人が日本に来れば少数派。こういったシンプルなことに起因する差別が、日常的に行われていると思います。
大変難しい話だな、と感じます。自分の家に他人が入ってくるのはみんな嫌だと思います。願わくは、自分の近所には、お互いを理解しあえる人たちが住んでほしいと思います。それがどんどん広がって行けば、結局どこかで、境目ができて、こっから先は、部外者は入っては行けないよ、という話になります。
これが、民族問題の根本にあると思います。
ショコラの葛藤は、さらに深いです。
白人たちは、自分を同じ人種として、同じ文化として受け入れなかった一方で、黒人として、白人に蹴られるという立場で、人気者として受け入れました。
一方で、自分の国で、白人は少数派であるにも関わらず、ショコラの父親は白人に使われる立場にありました。多数派と少数派ということでは解決されません。その根底には支配の歴史があります。
この映画の最後、ショコラの最後はサーカスです。サーカスの名前はフランス座。
何を伝えたいのか?
フランスやドイツは、自分たちのしてきた過ちを、償うだけでなく、文化的にも発信し、後世に残そうとします。二度と同じ過ちをしないようにと。
過去の人たちの苦しみによって、様々な問題が解決されています。その人たちの犠牲を絶対に無駄にしては行けないと思います。
日本に、従軍慰安婦問題の反省を後世に残すための映画があるでしょうか? アメリカに、原爆の惨さを後世に残すための映画があるでしょうか?
今、再び移民問題で葛藤するヨーロッパ。
Zero Tolerance政策で、今度は強制送還の話が出てきたアメリカ。そして、基本的人権は、アメリカ人のためのものであるという排他的な考え方。
アメリカが貿易戦争に突入する中で、海外生産に踏み切って政治と経済とは別であることを示したハーレーダビットソン。
1ヶ月に3回も中国を訪問した北朝鮮のトップ。
中立な国としてプレゼンスを発揮したシンガポールとフィンランド。
リークされるパナマ文書。
世界は、今、正しい方向に向かうのか、間違った方向に行くのか、とても重要なタイミングだと思います。
二度と、悲劇が繰り返されないようにするために、文化の力も重要だと思います。