One Hand

先週、コンサルタント時代の大先輩と食事に行きました。年齢は私よりも5歳程下ですが、私にコンサルタントとは何たるかを教えてくださった大師匠です。

今回もたくさんの学びをいただきましたが、一つ反論したことがありました。その大先輩は私同様コンサル会社を退職してサラリーマンをしています。当然、自分で受注して自分で実行して自分で回収するコンサル時代とは違って、仕組みの中の一つとして動く日々に変わっています。そのことをその大先輩は、「片手で仕事をしている」と表現していました。

私が反論したのは、「だったら、両手で仕事するようにしなければいけませんね。」という内容。その時点で、その大先輩は一言も返事をせず、自然と別の話題に移りました。その日は楽しい飲み会で終わったのですが、翌日になって考えてみると、「深い」と思いました。

今、副業を奨励する企業が増えています。副業によって様々な経験を積み、それが自社に戻って来ればイノベーションが起こるということが目的だと思います。そもそも組織内部の取引コストが下がっているので、従来のようなピラミッド型の雇用形態は崩壊し、様々なバックグラウンドを持つメンバーをプロジェクト毎にマネジメントするプロジェクトマネジメントが重要なスキルになり、従来のような部長とか課長とかそういった役職はそのうちなくなると思います。組織内部の取引コストが下がっているのはICT技術のためです。情報はオープンになり、スピードは早くなり、今や課長がハンコを押して、部長がハンコを押して、担当役員がハンコを押して、社長がハンコを押してなんていう無意味な意思決定は成り立ちません。これはすでに世の中で起こっている明らかな事実。

「片手で仕事をする」ということは、このことを意味していると思います。組織内部の仕事を片手で、組織外部の仕事をもう一方の手ですることによって、バランスを保つことができます。組織内部の仕事を両手でしていると、組織の枠を超えた仕事など一つもできず、それは結果として組織にとってマイナスになると思います。

人には、右脳があり、左脳がある。どんな美しい顔であっても、右側を隠した場合と左側を隠した場合は全く別の顔です。どんなに素晴らしい人格者でも必ず内面には悪の心がある。バカと天才は紙一重と言われます。成功と失敗には常に一つのターニングポイントがあります。ICT化が進み、情報の量と取引のスピードが早まり、世の中がどんどん「効率化」という一つの方向に向かって、いろんなものを飲み込みながら突き進んでいる時代だからこそ、みんなが片手を外に出すことが重要ではないかな?と思いました。

私も今はサラリーマン。少なくとも今は、両手で仕事をしていますが、毎月の雑誌の連載やフランス語など、コンサル時代から何年も続けていることはたくさんあり、確かに片手を出そうと思えば、出せる要素はたくさんあります。少し私も、片手で仕事をすることを考えていかなければならないな、と改めて感じました。

サラリーマンである以上、片手で仕事をしたとしても、両手以上の成果を出せるようにならないといけません。でも片手で仕事をした方が、両手で仕事する以上の成果が出せるような気もします。

2017-11-05 | Posted in BlogNo Comments » 

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