信用 – Credit –
ビジネスとは何か?
様々な回答があると思いますが、私は信用の連鎖だと思います。例えば売買。売り手から仕入れるためには、買い手の信用が必要です。取引の金額が大きくなればなるほど、売り手のリスクが大きくなります。だから日本では手形取引が普及していました。買う方も、売り手の信用が必要です。万が一購入した製品が不良品だったら、お金を払っても使い物になりません。
昔はお互い知っている者同士で取引をしていたので、必然的に信用できる人と信用できない人は明らかになり、たくさんの信用を獲得した人ほど大きなビジネスができました。しかし時代は変わり、取引はスピーディに。だんだんと手形の習慣はなくなり、現金決済で、売り手側がファクタリングをかけるとか、そういった信用面での不安をヘッジする方法が不可欠になっていきました。そして取引はグローバルに。相手の顔を知らなくても安心して取引できるペイパルやアリペイのようなエスクローが発展しました。そしてこれからはブロックチェーンが信用を代替してくれるでしょう。
ところが仕組みが発展したおかげで、信用の築き方を学ぶ機会が減ってきています。あまりにも急速に成長するビジネスモデルがあり、一つ一つ小さな信用を積み重ねることが、むしろ時間を浪費しているように捉えられてしまうこともあります。ビジネスの本質は昔から変わっていないのに、仕組みを学ぶことに忙しくて、本質を学ばないままビジネスを続けてしまう。社会にポンと放り出されると、どうやって信用を得たらいいかわからない。これはかなり辛いです。
現在私は中小企業で働いています。会社全体の売り上げも利益も、一人の商社マンが稼ぐ金額。その規模で150人もの人が働いています。金額だけ見ると、一人の商社マンの仕事と変わらないかも知れません。でも、同じ金額を客から受け取るまでに、社内でたくさんの信用がつながっています。客に無事製品を納入するまでに、こうすべきだ、ああすべきだ、これが足りない、あいつが言っているならば大丈夫、など。私が商社で働いていた時に恐れていたのは、商売が飛ぶこと。だから一生懸命客先に足を運んで信用を築いていました。今の会社では、総力戦で動いています。客の信用も大事ですが、社内の信用も大事。社内がお互いに信用していれば、その信用は客にも伝わります。社内がお互いに信用していれば、必ず良いアプトプットに結びつきます。社内がお互いに信用をしていれば、よほどのことがない限り、商売は飛ばないのではないかな?
どんな業種だろうと、ビジネスは一つ一つが信用によって成り立っています。一つ一つが専門特化してきている時代だからこそ、信用が大事。信用とは、感謝すること、おごらないこと、自惚れないこと、甘えないこと、妥協しないこと、その他、ほぼすべて、心構えによって決まります。
政治的とか、官僚的という言葉が使われることがあります。これは往々にして信用とは切り離された場面で使われることが多いと思われます。人間には裏と表があり、理想だけでは国は統治できません。だから裏の部分も担っているのが政治でしょう。
世界の超大国の大統領に、ビジネスの世界出身で、政治は初心者であるトランプ氏が就任しました。大統領の就任式で述べられた内容は、理想。裏がある世界で、どうやってこの理想を実現するか?これからそれが問われます。超一流のビジネスを築いてきた人は、超一流の信用を築いてきた人なので、トランプ大統領は、大きな器で信用を築いていくでしょう。でも、信用は一旦裏切ったら終わりです。トランプ大統領は、あえてわかりやすい、そして実現不可能と思われる目標を大きく掲げました。途中で諦めたら、信用を失うし、実現すれば、とんでもない信用を得るでしょう。これはとんでもなく大きな賭けと言えます。
世界の人類が、今、トランプ大統領の賭けに巻き込まれました。アメリカ合衆国国民の信用を得ることを最優先に、トランプ大統領はあらゆることを仕掛けてくるでしょう。政治の世界出身でない超大国の国家元首と、これから交渉しなければならない政治家と官僚。日本の政治家、日本の官僚もまた、トランプ大統領同様に、わかりやすい、そして実現不可能と思われる目標を掲げて、日本国民の信頼を得ようとするか?いや、それはないでしょう。日本国民の信頼を得ても、トランプ大統領の圧力に屈っすることになっては元も子もありません。やはり日本の政治家、官僚にとって最優先なのは、これまで同様、世界中の情報を入手して、裏も表も見ながら、日本にとって最善の答えを、行政と政治の立場で出すこと。予測不可能な相手が大統領になったことで、これからは今まで以上に国内での議論を活発にしなければならないでしょう。そして、その議論の底にあるのは、お互いの信用。
トランプ大統領の出現によって、これから世界がどうなるのかわかりませんが、日本で政官民、それぞれがこれまで以上にお互いを信用しあって、力を合わせて日本のために、アジアのために、世界のために最善な答えを出していかなければならなくなったということは言えるのではないかな、と思います。
18年前、私が社会人になったときは、まだ手形取引がありました。商売とは、顔を見てするものでした。客にも、メーカーにも、厳しく叱ってくれる方がいました。そうやって、ビジネスを学んできました。今、40歳になっても、地位も金も、何も一切ないですが、信用を得る方法だけは学んできたし、今も学び続けています。
何か、日本のために、役に立てることがないかな。