Project Manager

昔読んだ何かの本で、騙され続けた少年が最後銀貨1枚で老人を雇って、修行して立派になる話がありました。すごい昔の話なので定かではありません。

映画「アンノウン」では記憶を失った主人公を元秘密警察の老人が助けます。誰も主人公を信じない中、その老人だけが主人公を信じます。なぜならば、主人公の話がブレずに首尾一貫しているから。

 

さて、マネージャーには2種類いると思います。

一つ目は決まり切った仕事を回す人。そもそもビジネスモデルは決まり切った労働が対価に変わる一つのサイクルを仕組み化したものを言います。例えば売れる商品があって、買いたい顧客がある。そうするとその商品を作るというビジネスモデルと、顧客を連れてくるというビジネスモデルがなりたちます。これらのビジネスモデルを安定的に回せば、安定的な収益が維持されます。これらそれぞれのビジネスモデルを回すために、決まり切った仕事をしっかりと取り仕切るのがマネージャー。多くの場合は、自分自身がそのビジネスモデルを経験して、そして成長して監督側に回ります。経済が順調に成長していれば、決まり切った仕事を回してさえいれば、ビジネスも大きくなります。またその延長線上で新しいビジネスモデルも生まれたりします。なぜなら経済そのものが成長しているから。だから、監督側に回るのは年功序列が基本。みんな一生懸命マネージャーの指示に従い、いつか自分もマネージャーになろうと頑張ります。マネージャーになれば、自分の手を動かさなくても、監督をしていればいい。しっかりと監督をしていれば、経済の成長と一緒に、自分も仲間たちも成長できる。

 

もう一つは、危機に対応するマネージャー。このマネージャーの役割は、決まり切った仕事を安定的に回すことが役割ではありません。むしろ、外部的な要因で回らなくなったサイクルを元に戻したり、または経済が縮小する中で、自分たちだけはビジネスを大きくしたり。このマネージャーの役割は、年功序列ではできません。そもそも不利な状態からスタートして、事態を好転させることが役割なので、言い訳も失敗も許されません。

 

昔は前者の決まり切ったビジネスのサイクルを回す監督役のマネージャーが必要でしたが、経済が縮小する今、後者の危機に立ち向かうマネージャーが、どの会社でも必要になっています。しかし、そういったマネージャーは、自社の決まり切ったビジネスのサイクルで育った人間から得ることは難しい。だから、外部からハンティングすることになります。

一方、外部からハンティングしても、本当にいい人材かどうかわからない。いやむしろ、「はずれ」の確率の方が高いでしょう。今の時代、簡単にV字回復できるビジネスモデルなど絶対にありません。だから、それなりに長期スパンで、批判に耐えながらも、信念を貫きつつ、そしてその一方で外部から来た人間として真摯にビジネスモデルを学びつつ、最善の答えを出していかなければ、V字回復など不可能です。でもそれが本当にできる人間ならば、そもそも雇われずに、自分で会社を興すでしょう。

 

これからは企業は、後者の危機に対応できるマネージャー、ビジネスモデルを再生させるプロジェクトを実現するマネージャーが必要です。そういったマネージャーがいるかどうかに、企業の存続がかかっていると言っても過言ではありません。

 

そのマネージャーはきっと、人材派遣会社には登録されていないでしょう。どれだけキャッシュをチラつかせても、ヘッドハンティングの声にも耳を傾けないでしょう。

 

騙され続けた少年を救った老人の報酬は、銀貨1枚でした。「アンノウン」の元秘密警察の老人は「ブレていないこと」だけを理由に協力をしました。

これらの老人と同じく、常に一人でいて、危機の時に救う力を持っている、経験も勇気もある人間は必ずいます。私ですら何人か知っているということは、世の中にはきっと、たくさんいます。そして、危機を救う力を持つプロジェクトマネージャーは、常に、お金以外の理由で動きます。お金以外の理由とは何か?それは、真実・誠実・信頼・感謝。これに尽きますが、これほど難しいことも他にはない。

 

でも、それって、そもそも、もともとすべての日本企業が持っていたものではないかな、と思います。

 

2017-01-04 | Posted in BlogNo Comments » 

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