信為萬事本

館林にある、日清製粉グループが運営している製粉ミュージアムを訪れました。

日本の小麦粉が水車製粉であったころ、輸入粉が徐々に拡大。そのことに奮起した正田貞一郎氏が機械製粉を導入し、一代で日本最大の製粉会社日清製粉を築き上げます。その歴史をミュージアムで勉強することができました。

正直、そもそも小麦粉ってどうやって作るんだろうという関心から入ったミュージアムでしたが、確かに麦のこともたくさん学ぶことができましたが、それ以上に精神的な学びの多いミュージアムでした。

企業の社会的責任(CSR=Corporate Social Responsibility) が言われるようになりました。最近ではCSV(Creating Shared Value)といった視点での経営も不可欠になっています。しかし、戦前の日本には、こんな横文字ではなく、日本の産業をなんとかして発展させよう、困っている人がいれば助けよう、という気持ちを持ったすばらしい侍達がたくさんいたんだなあ、と改めて感じました。

全然話は変わりますが、今のペースで世界の人口が年率2%で増え続けると、200年後には地球上は人で埋め尽くされるそうです。

また全然話が変わりますが。子供の頃、駄菓子屋に行くのが大好きでした。駄菓子屋にいくと、お菓子だらけだからです。みんな大好きでした。どれだけ怒られても、買い食いをする。

しかし、しばらくすると、スーパーマーケットのお菓子コーナーに行くと、お菓子だらけになりました。そしてさらに、しばらくすると、街中がコンビニだらけになりました。コンビニには、百円均一のお菓子が無機質なパッケージに入ってたくさん並んでいます。

おそらく、今、駄菓子屋にいってワクワクする子供は極端に減ったと思います。その分、買い食いもなくなって秩序はよくなったかもしれませんが。

そして、最近は健康ブーム。コンビニ行くと、野菜ジュースがたくさん。レトルトのようなパッケージに入ったカット野菜もたくさん。すでにカットされているので、野菜を手にとって、どれがいいかな、って選ぶことができません。元の形もわからないカット野菜。さらに、簡単に栄養が取れるタブレット食品のようなもののコーナーもできています。いや、食品というよりも、お菓子のように見える、栄養食品です。

何か、人間の本質的な楽しみ、特にワクワクするようなところが、何か別の、便利さのようなものに置き換わって行っているように感じるのは私だけでしょうか?

おそらく、今の子供達にとっては、ロビンソンクルーソーが逆のSFになる世界です。そんな不便なわけないだろー、絶対作り話だろー、といった感じで。

今の社会は、便利になって、それでももっと便利を追求して競争を繰り広げて、社会がいっぱいいっぱいになって、なんとか共存共栄するために、CSRとか、CSVって言葉が生まれてきた、そんな感じです。

200年後、人類は、人間で埋め尽くされた地球の上で、みんなで手をつないでサプリメントを食べるのでしょうか?仕事はロボットに任せて。

正田貞一郎氏の祖父は、日本有数の米問屋だったそうです。関東の飢饉の時には率先して自らのコメを飢えている人々に提供。

不便だからこそ、助け合う。不便だからこそ、奮起する。不便だからこそ、夢を描く。不便だからこそ、信念を貫く。できるかできないかわからないから、とにかく仲間を信じる。

一種類の粉を作るのに、とてつもない手間がかかっています。その粉をつかってうどんを作るのに、また、とんでもない手間がかかっています。ミュージアムで流れていたビデオでは、粉を練っていると真冬でも顎から汗がしたたり落ちるっておっしゃってました。

だから、うまい。

製粉ミュージアムを見て、「便利に支配されないこと」を追求しなければならないなと思いました。

そういえば、昔、右に行くか、左に行くかまよったとき、楽な方さえ選ばなければ、答えにはいつか、必ずたどり着く、と、教わりました。

大事な、大事なことを思い出させていただきました。ふらっと立ち寄った製粉ミュージアムに感謝。

2016-12-04 | Posted in BlogNo Comments » 

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