金利 -intérêt-

小売のマージンは30%〜40%ないと、やっていけないと言われています。

 

店舗の家賃や償却費、人件費、ファサードデザインといった固定費がかかるのはもちろん、

チラシといった販促費や売れ残りの在庫処分の費用なども商品価格に載せなければなりません。

 

そして、長い間意外と忘れられているのが金利。

 

半年前に代金を支払って仕入れた商品について、店頭で売れたとします。

もし、商品を仕入れずに、その商品の価格分のキャッシュを半年間、銀行に預けていたとしたら、

いくらかの金利が得られていたはずです。

かりに、その商品を仕入れるためにお金を借りていたとしたら、

その借りたお金には金利が課せられているはずです。

 

しかし、今はゼロ金利時代。

 

どちらの金利も、今の時代、半年分だったら無に等しいです。

でも、もし金利がバブルの時のように高かったとしたら、

例えば年利6%だとしたら、大変雑な考え方ですが、

半年で3%分の金利がかかっていることになります。

 

そうすと、単純に商品の価格は3%上がるでしょう。

いや、店舗、ファサード、什器を揃えるために通常はお金を借りるので、

その固定費分も上がるので、その分も少なくとも上がります。

 

私はこの道のプロではないのでわかりませんが、

結局なんだかんだ言って、金利分以上は価格に上乗せされることになるのではないでしょうか?

 

怖いのは、ゼロ金利が続きすぎて、そのことを忘れつつあること。

お金を借りるにも、金利が安く、またマイナス金利で借りやすくなっているので、

昔よりも運転資金における借り入れ金の比率が高い小売店が多いのではないでしょうか?

 

これが、金利上昇に転じると、多くの小売店が、即、金利負担上昇による運転資金難に陥ります。

そして、店頭商品がすぐに売れていかないと、その在庫分の金利負担にも苦しむことになります。

あらかじめそのことを考えて価格設定していれば大丈夫ですが、ほとんどの店舗は今金利分を踏まえた価格設定はしていないと思います。

 

 

金利が安いから、限界まで価格競争していますが、

もし金利が一定基準よりもあがった瞬間、店舗は値上げするか、それか、店をたたむかを迫られることになります。

もし、店をたたまずに、値上げするという決断をした場合は、それは金利上昇分を超える大きな値上げになるでしょう。

 

インフレ目標2%と言っていますが、もし、金利が2%上昇したら、物価はきっと、2%以上は上昇する。

 

これは我が国として絶対に避けなければならないシナリオ。

 

だから日銀は、金融政策を量ではなく、質に変えたのでしょう。

日銀が金利をコントロールしている限りは、上記のような事態は起こらない。

徐々に金利を適正な基準に上げていけば、店舗は一気に値上げをしなくても済みます。

2%という丁度よい基準に落ち着かせ、継続させることができるのではないか?

 

 

しかし、このシナリオは、金利が金融市場だけですべて決定するならば成り立ちますが、

金利は生産活動、消費活動のすべての影響を受けるので、シナリオ通りにはいきません。

だから金融政策は難しい。

 

今の金融政策では、氷の上に絨毯をひいて、氷の下が見えないようにしています。

我々は、日本という硬い基盤の上いるから大丈夫だよ。

 

 

でも、だんだん、氷は薄くなっています。

いつパリっと割れるかわからない。

パリっと割れた時、キャッシュを持っていない企業から順番に、水の中に落ちていくことになります。

とても危険な状況。

 

早く、氷を厚くしなければなりません。

氷があるうちに。

 

氷を厚くするためには何が必要か?

金利が高くなっても、金利負担に苦しまない経済構造を作ることだと思います。

 

経営資源は、人、物、金。

 

これ以上、金を動かしてしても、氷は厚くならないと思います。

むしろ薄くなるばかり。

やっぱり、人と物が動かなければなりません。

 

日本には、ずっと、すっと前から、その両方があると思うんだけどなあ。

今重要なのは、アングロサクソン的な考え方ではなく、日本的な考え方に戻ることだと思います。

エブリデー・ロープライスではなく、いい物を、信頼できる人から買いたいと思う、

昔の日本に。

 

 

2016-10-09 | Posted in BlogNo Comments » 

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