喜び -Joy-
今日の昼矢口渡に着いた時。
偶然にも、30分程時間ができました。
これは昼ごはんを食べるしかないと考え、歩いていると、いくつかの飲食店がありました。
ただ今日の気分は定食屋。
インド料理とか、海鮮丼とか、美味しそうな店もたくさんありましたが、
絶対定食と思い、定食屋を見つけて入りました。
時間は13時。
昼休みが過ぎてしまったせいか、店に入った時には一人も客がいませんでした。
とりあえず、カウンターに座る。
外は暑かったので、ほっと一息です。
そして、かんばんに書かれたメニューの中から、ナスの料理を頼みました。
何気ない、日常の一コマといえるでしょう。
大将はおそらく70歳前後。奥様もきっと同じくらい。
奥様が急須にお茶を入れ、それから湯のみに入れてくれます。
外は暑い。店の中も涼しいとは言えません。
しかし、その暖かいお茶がうまい。
そして、大将は、ナスを取り出します。
のんびり、ナスを切ります。しかし、あっという間に切り終わります。
そして、ナスを挙げている間に、サラダとか、豆腐とかを小鉢に入れ、
奥様が小鉢をお盆に並べています。
ナスが一瞬で揚がりました。
奥様が、お盆に乗せて持ってきれくれます。
この一連の作業も、何気ない日常の一コマでしょう。
ゆっくりゆっくりとした作業が、とんでもなく早いスピードで料理を完成させる。
そして、その一つ一つの作業が美しい。
客として一人で座っている私は、なんだか劇場を独占した気になりました。
カウンターが、横にずーっと伸びていく感じ。
あまりにも手際がよくて、現実と空想の狭間です。
そして、ナスを口に入れた瞬間、一気に現実に戻りました。
う、うまい。
ただナスを揚げただけ。しかし、とんでもなくうまく、一瞬で食べ終わりました。
食べ終わると、大将が、「今日は暑いですね」の一言。
普段頭空っぽの私は、暑かろうと寒かろうと、どう感じていようと、「そうですね」と答えます。
しかし今日は違いました。
「とても美味しかったです。ありがとうございました。」
人間の喜びって、なんでしょう。
美味いものを、美味いって食べる事が、一番の喜びではないかなと思います。
今日は、紛れもなく、最高の喜びを、定食屋の大将と奥様にいただきました。