<第35号> GDP その17イギリス

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グローバル市場開拓 メルマガ
<第35号>
GDP その17イギリス
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こんにちは
グローバル市場開拓メルマガ 発行責任者の牧野好和です。

1902年、当時世界で巨大な力を誇っていた英国は、
これまでの「栄光ある孤立」をやめ、
初めて、他国と同盟を結びます。

その同盟の相手国は日本。

英国にとって、日英同盟は、当時の中国、清をめぐる欧州列強との駆け引き、
そしてロシアへの牽制の目的がありました。

日露戦争で日英同盟は日本を大きく助けることになります。

しかし、第一次世界大戦後、日英の利害が対立して同盟は廃棄されます。

日本はその後、中国と戦争に入ります。
満州とモンゴルの国境線であるノモンハンで、
日本がロシアと再び衝突した時はイギリスをはじめとする、
列強の支援を得られませんでした。

そして、日本がその後蒋介石政権を追って南下を続けたことで、
今度は日本は欧米列強を敵に回すことになり、太平洋戦争に突入します。

歴史に「もし」はありませんが、
でも、もし日英同盟が維持されていたら、
今の世界の勢力図、そして日本の立場はどうなっていただろうと、
思ってしまいます。

戦後締結された日米安全保障条約は今も維持されています。

日本にとっては、今、最初の同盟国であるイギリスよりも、
今の同盟国であるアメリカの方がはるかに身近な国です。

さて、今号は、世界の覇権国とも言えるほどのプレゼンスを
長い間国際社会で発揮した日本にとっての遠い恩人、
イギリスのGDPを見てみたいと思います。

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<第35号>
GDP その17イギリス
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かつては、イギリス人というと、
シルクハット、手袋を身に付け、
パイプをふかし、杖を持ち、
上品な英語を話す紳士がイメージされました。

しかしこの紳士のイメージは、一部の上流階級のものです。
中流階級や労働者階級は服装も明確に
上流階級と区別されていました。

称号が違えば、身につける服装も違い、
言葉のアクセントも違うという階級社会の歴史が、
イギリスにはあります。

今も階級社会はイギリス文化の重要な一部です。
保守党と労働党の二大政党制、
上院である貴族院と、下院である庶民院からなる二院制
からもその背景を感じます。

一方、イギリスでは人種差別がアメリカほど問題になることは
ありません。
もちろん世界中から様々な人が集まっていますが、
人種によってエリアが分かれるといった状況は顕著ではありません。
警官は基本的に丸腰であることからもその違いを感じます。

歴史において男性と女性のジェンダーギャップも深く定着していましたが、
「鉄の女」と呼ばれたサッチャー首相にみられるように、
早くから女性の首相が誕生しています。
女性の社会進出は日本よりもはるかに進んでいます。

王族や社会階級などの大切な歴史と制度を失わずに、
変化を続ける社会に適合させて、
偉大な国の尊厳を維持しているように感じます。

その一方で、スコットランドの独立やブレクジットなど、
分断と不寛容が進む国際社会の最前線を進んでいます。

さて、今のイギリスの一人当たり名目GDPを見てみたいと思います。
日本の一人あたり名目GDPを括弧内に記載しています。
※単位:ドル/JETROホームページより引用

2009年 38,601(41,014)
2010年 39,122(44,674)
2011年 41,650(48,169)
2012年 42,023(48,633)
2013年 42,981(40,490)
2014年 47,004(38,156)
2015年 44,495(34,569)
2016年 40,658(38,805)
2017年 39,975(38,344)
2018年 42,558(39,306)
※2018年は推定値

2016年6月23日にイギリスの国民投票で、
過半数がEUからの離脱を選択しました。
イギリスの一人当たりGDPに大きな影響を与えていることが、
上記推移から顕著に読み取れると思います。

ただし、上記推移はドルベースです。
実は、ブレクジットによって、
イギリスのスターリング・ポンドが対ドルで大幅に下がったことが
影響しています。

ご参考までに、JETROのデータでスターリング・ポンドの
対ドル為替レート(期中平均値)を記載します。

2009年 0.64
2010年 0.65
2011年 0.62
2012年 0.63
2013年 0.64
2014年 0.61
2015年 0.65
2016年 0.74
2017年 0.78
2018年 0.75

上記レートに一人当たり名目GDPを掛けると、
2015年の一人当たり名目GDPは28,922 ポンド
2017年の一人当たり名目GDPは30,713 ポンド
となりますので、実質、ポンド建てでは一人当たり名目GDPが伸びていることになります。

JETROの資料から、失業率の推移を見てみます。

2009年 7,38%
2010年 7.88%
2011年 8.10%
2012年 7.99%
2013年 7.59%
2014年 6.19%
2015年 5.37%
2016年 4.91%
2017年 4.40%
2018年 4.09%

顕著に改善していることがわかると思います。

リーマンショック時のイギリスの失業率は高水準で、
大きな社会問題となっていて、
それが世論をEU離脱に牽引した一つの要因となっていました。

失業率は常に、イギリスの政策の大きなテーマです。

かつてイギリスは社会保障費負担に苦しみ、
サッチャー元首相が政府機能の削減や金融市場への外資参入を認めるなどの
政策を行ったのち、一時的にイギリスの国際競争力が落ち込み、
失業率が11%台まで悪化したことがあります。

リーマンショック前も今と同様にイギリスの失業率は大幅に改善していましたが、
リーマンショック後に悪化しました。

そして今、再び大幅に改善していますが、
EU離脱によって、外国資本の工場がイギリスから移転するという話題が
現実味をおびてきています。

このように、今のイギリスは複雑で、
先が見通しにくい状況となっています。

ただ、これまでの歴史と同様に、
世界の最も先を走っている動きです。

分断と不寛容という、
今の大きな世界の流れを受けたイギリスの、
EU離脱への動きの今後が、
国際経済全体の未来と各国の今後の動きに大きな影響を与えることは、
間違いないと言えます。

本号の内容は以上です。
来週もよろしくお願い申し上げます。

2020-01-12 | Posted in Mail Magazine Back NumberNo Comments » 

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