<第24号> GDP その6シンガポール
=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=
グローバル市場開拓 メルマガ
<第24号>
GDP その6シンガポール
=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=
こんにちは
グローバル市場開拓メルマガ 発行責任者の古白です。
さて、グーデンベルクが活版印刷を発明したのは十五世紀です。
その後、急速に知識が世界中に普及し、様々な技術が発明されました。
活版印刷の普及は宗教改革の発展にも寄与しました。
宗教改革で生まれたプロテスタントは世界を大きく変えました。
アメリカはプロテスタントによって建国され、
今もプロテスタントが多数派を占め、
アメリカ歴代の大統領経験者のうち、
ジョン・F・ケネディ以外は、すべて
プロテスタントとのつながりが深いと言われています。
そして、活版印刷による知識や宗教の普及と時を同じくして、
ヨーロッパ各国によるアジアの植民地化も進みます。
今のマレーシアとシンガポールの位置にあったマラッカ王国は
ポルトガル、オランダ、イギリス、そして日本に侵略されます。
第二次世界大戦後、再びイギリスの植民地となったマラッカ王国は、
イギリスの自治領となった後、マレーシア連邦となります。
マレーシア連邦内ではマレー系住民と、中国系住民の対立が生まれ、
客家出身のリー・クアンユーが主導する形で、
中国系住民が多数派を占める国家として、シンガポールが建国されます。
建国後のシンガポールの発展には目覚ましいものがあり、
人口500万人強で小さい国土にもかかわらず、
貿易、金融、テクノロジーの分野で世界をリードしています。
グーデンベルクの活版印刷は、
経済においても政治においても欧米中心の世界を形成する中で、
大きな役割を果たしてきました。
そして、世界が大きくアジアにシフトしようとしている今、
シンガポールの持つソフトパワーが、
ますます重要な役割を担っていくような気がしています。
さて、今号の内容です。
><><><><><><><><><><><><><><
<第24号>
GDP その6シンガポール
><><><><><><><><><><><><><><
さて早速ですが、
シンガポールの一人あたり名目GDPです。
日本の一人あたり名目GDPを括弧内に記載して、
比較したいと思います。
※単位:ドル/データ:JETROホームページより引用
2009年 38,577 (41,014)
2010年 46,569 (44,674)
2011年 53,364 (48,169)
2012年 54,892 (48,633)
2013年 56,519 (40,490)
2014年 57,272 (38,156)
2015年 55,331 (34,569)
2016年 56,455 (38,805)
2017年 59,990 (38,344)
2018年 64,041 (39,306)
2010年に日本を上回ってから、
その差がどんどん開いていっていることがわかります。
2018年には一人当たりの名目GDPは
日本の1.6倍以上となっています。
ノルウェーやカタールのような他の一人当たり名目GDPが高い国と違って、
シンガポールには資源がありません。
人口も少なく、一次産業や二次産業に適した環境とも言えません。
しかしながらその地理的環境を生かし、海運業を発展させてきました。
実際にシンガポール港に行くと海運のために整えられたインフラに
驚きます。
海運業が盛んだったイギリスの植民地として、
シンガポールはオーストラリアなど他のイギリスの植民地との間の
中継貿易の拠点としての役割を担ってきました。
大量のコンテナが荷下ろしされ、そして他の船に積み替えられる
ハブ港として、シンガポール港では貿易、倉庫、修理、ファイナンスなど、
様々なソフト面でのビジネスが生まれ、発展してきました。
そして今では、船だけでなく航空の分野でも
世界有数のハブとなっています。
世界各国の航空会社の航空機が
チャンギ国際空港で貨物を載せ替え、
また航空機のメンテナンスを受けています。
しかし、シンガポールの今の成長を導いたのは、
こういった物流やメンテナンスよりも、
むしろアジアの金融センターとしての役割と言えるでしょう。
中国語と英語の両方を話す人材が豊富で、
かつ、税制含めて外資が拠点を設立する上での
優遇制度が設けられています。
欧米企業がアジア市場に展開する上での拠点としての
シンガポールの重要性は、アジアの発展とともに、
さらに高まっていくでしょう。
一方で、三次産業依存の産業構造は常に成長の課題を抱えています。
中小企業が育ちにくいため産業の裾野が広がりません。
エネルギー資源だけでなく、水や食糧も輸入に依存しなければならず、
安全保障上も大きな課題を抱えています。
これまで、優秀な人材がソフトパワーを強化することによって
シンガポールの成長を牽引してきましたが、
周辺国もソフトパワーの力をつけていくことによって、
アジアにおけるシンガポールの地位が奪われていく可能性もあります。
今後はインドネシアのような隣国の大国との友好関係が、
シンガポールの成長を大きく左右すると思われます。
成長の分岐点に立っているとも見ることができるシンガポール。
政治と経済の両方を注視していくことが大切です。
今号の内容は以上です。
来週もよろしくお願いいたします。