<第22号>GDP その4マレーシア
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グローバル市場開拓 メルマガ
<第22号>
GDP その4マレーシア
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こんにちは
グローバル市場開拓メルマガ 発行責任者の古白です。
20世紀は「石油の世紀」と言われることがあります。
1908年にT型フォードの量産が始まり、
ガソリン需要が急増しました。
その後、二度の世界大戦を経て、
エネルギー源は石炭から石油にとって変わられました。
1960年には産油国によってOPECが設立され、
石油価格が国際石油会社によってコントロールされないよう、
生産量が調整されてきました。
1970年代の二度の石油ショックは世界経済に大きな影響を与え、
その後石油の先物市場が誕生したことによって、
石油は先物取引の主要な商品となり、
アメリカのWTIでは石油生産量を大きく超える規模で
石油先物が取引されるようになりました。
そして、20世紀における「石油」と同じくらい、
21世紀においては「データ」の重要性が高まると言われています。
すでにSNSへの投稿が、
イギリスのブレクジットやアメリカ大統領選挙の
結果を左右する程になっています。
中国ではデータのインフラが整備され、
「データ監視社会」とまで言われるようになっています。
オイルが人々の生活に不可欠になったのと同じように、
データも人々の生活に欠かせない存在になるのでしょうか?
22世紀になって、21世紀を振り返ってみないと、
その答えはわからないと思います。
さて、今号は、天然資源に恵まれ、
かつIT産業を推進している東南アジアの優等生、
マレーシアです。
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<第22号>
GDP その4マレーシア
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中学校の社会の教科書では
19世紀にイギリスの植民地だったマレーシアでは、
天然ゴムの「プランテーション」が開発されたことを習いました。
今も天然ゴムはマレーシアの重要な産業であり、
各地に天然ゴムの農園があります。
そしてマレーシアには、天然ゴムだけでなく、
スズ、パームオイル、原油、木材など、
豊富な資源を背景とした一次産業が発展しています。
石油産業についてはマレーシアの首都クアラルンプールにある
ペトロナスタワーで有名なペトロナス社があり、
欧米石油メジャー、ロシアのガスプロム、中国CNOOCに
次ぐ規模を誇っています。
1981年に就任したマハティール首相は、
ルック・イースト政策を進め、2003年までの在任期間中、
日本や韓国の倫理や精神面を学んで産業発展と人材育成に
取り組みました。
マレーシア資本の自動車メーカーである、
プロトンは三菱自動車、プロドゥアはダイハツ工業の技術で、
それぞれ自動車生産に取り組んできたことや、
ペトロナスタワーが日本と韓国の建設会社によって
建てられたことなどは有名な話です。
また、労働力の質の高さ、英語力、
ペナンやクアラルンプール近郊などの便利なインフラなどから、
電子機器メーカーが早くから、東南アジアでの
主要生産拠点としてマレーシアで電子部品の生産をはじめました。
ペナンには日系だけでなく、欧米メーカーも多く進出しており、
マレーシアで生産された電子部品が中国向けに輸出されており、
アジアのシリコンバレーと言われることもあります。
さて、マレーシアの一人あたり名目GDPです。
2009年 7,255 ドル
2010年 8,926 ドル
2011年 10,260 ドル
2012年 10,666 ドル
2013年 10,705 ドル
2014年 11,014 ドル
2015年 9,516 ドル
2016年 9,397 ドル
2017年 9,833 ドル
2018年 10,942 ドル
天然資源に恵まれ、そして、電子部品の一大生産拠点である
マレーシアは、典型的な輸出国であると言えます。
しかしながらこの一人あたりのGDPの高さは、
人件費も高いことを意味しています。
一人あたりの名目GDPが1万ドルを超えると
先進国の仲間入りと言われますが、
東欧諸国にはまだこの水準に達していない国もあり、
距離と人件費を考えると、仕向け地によってはメリットが薄く、
生産拠点としての競争力は長続きできないと言えます。
実際、日系家電メーカーには、マレーシアから撤退して
他国に生産拠点を移した事例もあります。
東南アジアにおける欧米そして東アジア企業の生産拠点としてではなく、
「マレーシアならでは」の競争力を磨いていかなければ、
成長が見込めないタイミングに来ていると言えます。
そういった中で、今、マレーシア政府が重点を置いているのが
IT産業です。
マハティール政権が1990年代から取り組んできた
MSC(Multimedia Super Corridor)計画によって、
クアラルウプール近郊のプトラジャヤには、
優れたITインフラが整っていますが、
ビッグデータ、人工知能、フィンテック、AIといった、定められた一定の分野で
マレーシアに進出する外資企業には
法人税減免などの優遇措置が与えらるようになっています。
その一方で、これまで恩恵を受けることができた
販売業や製造業では優遇措置が受けられなくなっています。
再び政権についたマレーシア首相のもとで、
今後、ICT技術を軸として競争力が磨かれていくと思います。
日本企業にとって、一人あたりGDPが1万ドルを超えたマレーシアは、
1)アジアの金融センターであるシンガポールの隣国という立地
2)東南アジア最大の市場であるインドネシアと同じ民族背景
3)イスラム市場への入り口
4)豊富な天然資源
5)英語を話す人材
6)購買力の高まりに支えられ、成長が見込まれる内需
7)独自の政策により発展するICTテクノロジー
8)利便性の高い国際空港とホテル産業に支えられた観光
といった点を捉えていく必要があります。
本号の内容は以上です。
来週もよろしくお願いいたします。