Space
私はコンタクトレンズをはめていますが、たまに調子が悪くて片方のコンタクトレンズを外すことがあります。コンタクトレンズを外した方の視力は0.1以下ですので、コンタクトレンズが片方しか入っていない状態になると、途端に空間が把握できなくなります。近くにあるものに手を伸ばしても、少しずれますし、道を歩いていると、気づかないうちに人にぶつかりそうになっています。人は目が二つあって、それぞれの目で自然と距離を計算しているから、空間が把握できるのだということを気づかせてくれます。
人には目が2つありますし、耳も二つあります。さらには鼻の穴も2つあります。きっと、視覚だけでなく、聴覚も臭覚も、空間を捉える上で役に立っているのだと思います。
人間のセンサーは、脳みそと直結していて、感覚を察知すると脳みそが直ちに計算します。熱いものを触ったら、熱いという感覚を触覚が覚えて、次からは火傷しないように、警戒するようになります。でも生まれて初めて熱いものを触った時から、熱いと思ったら手を引くように、条件反射の本能を持っています。
本能と経験の二つもまた空間を作っていると思います。その二つがこれもまた自動的に計算して、右に行くか、左に行くかを決めてくれる。本能も経験も磨き続ければ、判断は研ぎ澄まされていきます。
この2つの対になるものが作り出す空間を把握する力というのが、昔から重んじられてきたと思います。陰陽道とか、光と陰とか。常に2つの対があるから空間ができる。そして、どちらか一方の力が弱くなると、とたんにバランスが崩れて空間が把握できなくなる。
資本主義と共産主義もかつては対でした。しかしデタント、そしてベルリンの壁崩壊により冷戦が終結。世界は資本主義が支配する世の中になりました。そうなると世界は空間が把握できなくなり、金融が拡大し、環境が破壊されていきます。
そして、今急速に仮想の世界が拡大しています。今度は、現実と仮想の二つが対になろうとしています。そこできっと新たな空間が生まれるのでしょう。
新たな空間でどう生きるか?それはわかりませんが、どんな空間であっても把握する力を身につけていないといけないと思います。
視覚を失っても、聴覚を研ぎ澄まして補っている人もいます。人間の五感には無限の可能性がある。たとえ世の中が便利になっても、感性だけは、常に大事に、そして鍛え続けていきたいなと思います。