make, use and then

お金を稼ぐのと使うのはどちらの方が難しいか?

稼ぐのが簡単な人もいれば使うのが簡単な人もいると思いますが、簡単に稼げると思っていると、そのうち稼げなくなりますし、簡単に使えると思うと、そのうちお金がなくなります。結局答えは、どちらも難しい。

一般的に、若いうちはお金の稼ぎ方を一生懸命勉強して、歳を取るにつれてお金の使い方を一生懸命勉強することになると思います。問題は、お金の稼ぎ方とお金の使い方は全く異なること。お金を稼ぐための方法がたくさんあるのと同じように、お金を使う方法もたくさんあります。お金を増やすために使う方法もあるし、困っている人を助けるために使う方法もあるし、自分自身を成長させるために使う方法もあります。お金を稼ぐことに天賦の才能がある人もいれば、お金を使うことに天賦の才能がある人もいます。その両方を天賦の才能として最初から兼ね備えている人はおそらくいないのではないかなと思います。どちらかに秀でていても、必ずどちらかが劣っている。人間は公平にできています。重要なのはバランスだと思います。

道具についても、作る人もいれば、使う人もいます。作る人は使う人がいるから作ります。だから、使う人が使いやすいように道具を作ります。名刀正宗は、なぜ名刀かと言えば、よく切れるからです。よく切れる名刀を、どうやって使うかは、使う人次第。刀工である正宗氏は、たくさんの人を殺してほしいという願いを込めて、名刀を作り続けたのではないはずです。その一方で、自分の名刀が人を傷づける道具になるということも十分知っていた。そのジレンマと戦うことができたからこそ、名刀を生み出したと思います。

原子力爆弾を生み出したマンハッタン・プロジェクト。たくさんの人を殺すためではなく、戦争をやめさせるために、一流の頭脳達が必死になって発明したはずです。しかしそのジレンマは、名刀正宗とは違ったはずです。刀を作ることが人生である職人は作るのは自分だけ。作ると決めるのも自分だけ。すべて自分の責任。国家のプロジェクトに参画した頭脳達は、作るのは自分だけではありません。共同作業です。また、作ると決めるのは自分ではなく、他人です。もしかしたら作りたくない人もいっぱいいたかもしれません。そして、こうやって完成した道具は、職人の魂が伝わりにくいので、誤った方向で使われる可能性が高いと思います。だから、使う方が、ちゃんと使い方を知っている人でなければいけない。

ドローン、AI、ロボット。今たくさんの道具が生み出されています。それを作った人は、使う人のことを考えて作っています。でもそれを使う人たち、つまり我々は、その使い方をちゃんと知っているでしょうか?ドローン、AI、ロボット。いずれも一人の職人が、自分の魂を込めて作ったものではありません。資本主義の原理に基づいて、競争社会の中で生まれて来たものです。だれが作ると決めたのか、作ってしまったものに、誰が責任を負うのか?

サッカーボールは、サッカーをするためのものです。卓球をするためのものではありません。卓球をするためには、卓球のボールがある。こんな当たり前のことが、新しいテクノロジーでは当たり前ではなくなります。誰かが作って、誰かが使う。もしかしたら使う人がいなくても作る。もしかしたら、できてから、使い方を考える。それが間違って使われた場合に、誰が責任を負うのか?

誰も責任を負いたくありません。そして、誰にも責任を負わせることはできないでしょう。今社会はそういった方向に向かっていると思います。このスピードに追いつく法規範が必要です。一瞬で国境を越えることができる時代、その法規範は国際的なものでなければなりません。未だ国際的な憲法が存在していない中、条約だけがその規範を作ることができます。

まずはみんなで、使い方をちゃんと決めるべきじゃないかな、と思います。リオのセヴァン・カリス=スズキさんの伝説のスピーチ「どうやって直したらいいか分からないものを壊すのはもうやめてください」は1992年。みんな感動して、COPは今も続いているけど、我々はまだ、直し方がわからない地球環境を壊し続けています。使い方がわからないものを作り続けると、もっとたくさん壊すことになると思います。

分かっていても、止められないか?そんなことは、決してないと思います。パリ協定、そしてタラノア合意みたいな素晴らしい合意をする力を、人間は持っています。テクノロジーの使い方だって、きっと合意できるはずです。

2017-11-26 | Posted in BlogNo Comments » 

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