配達 -Delivery-

台湾で有名な日本人。八田與一、後藤新平、森川清治郎。

 

もっとたくさんいらっしゃると思いますが、台湾でよく耳にするのがこの3名。いずれも台湾におけるインフラの発展と治安の維持に多大な貢献をされた方々です。

 

日本の占領とか、統治とか、言葉は悪いですが、台湾が日本領に一時的に属していた時代の前後をBeforeとAfterで表現すると、Afterでは「毎朝牛乳が届くようになった」と教わりました。毎朝牛乳が届くということは、毎朝定時に届くという配達網が整ったこと、牛乳という冷蔵製品を保存できるほど衛生状態がよくなったこと、そして玄関前に置いても盗まれないほど治安がよくなったこと。

 

占領といった表現があることから、必ずしも歓迎されることばかりではなかったと思いますが、総論として台湾の方々が当時の日本の行いを大変高く評価してくださっていることは大変ありがたく、誇らしいことです。台湾に行って、台湾の人々のお話をお聞きすると、先人達の偉業を決して無にしてはならないと強く感じます。

 

日本では今コンビニエンスストアが24時間オープン。年賀状を書くこの季節、24時間空いているコンビニでいつでも年賀状が郵便局と同じ価格で購入できることはありがたいことです。

 

一方で、朝の牛乳配達は私の子供の時と違って当たり前ではなくなりました。我が家も一時期購入していましたが、子供たちも毎日は飲まないので溜まっていき、そのうちやめました。「ビジネスモデル」として難しくなっていると思います。

 

新聞配達もビジネスモデルとして厳しくなっています。どんどんネットに顧客を奪われるので、配達する部数は私が大学時代に朝日新聞の新聞配達で雇っていただいていた時と比べると、間違いなく半分以下でしょう。冬の金沢で、朝雪かきをする人々に暖かい言葉をかけていただいたこと、配達先の農家のおばあさんが弁当をくれたことなど、よく覚えていますが、こういったコミュニケーションもなくなっていくんだろうなと思うと、切ない気分になります。

 

Facebookのマークザッカーバーク氏が開発しているJarvis. 24時間、人工知能が家で執事としての機能を果たしてくれます。そのうちきっと、新聞が朝ポストに届けば、ベッドの横に、牛乳が朝玄関前に届けば冷蔵庫の中に、自動的にJarvisが移動させてくれるようになるでしょう。

 

朝日新聞で新聞配達でお世話になっている時に、よく配達忘れがありました。代わりに社長がお詫びのタオルと一緒に配ってくれていて、朝行くと「昨日○○さんのところに配達忘れがありました」とメッセージがありました。申し訳ないから、次からは配達忘れしないようにと一生懸命覚えたものです。当時はナビも普及していない時代。矢印と棒の数で、地図代わりに道を覚える方法を教えてもらいました。雪の金沢をスパイクタイヤを履いたホンダのスーパーカブで走りながら配達です。日経新聞を配達している同じ学生寮の友人とほぼ毎日、同じ家の前で出会います。日経新聞よりも早いか遅いかで、自分のペースをつかんでいました。

 

大きな家で、朝日新聞と日経新聞以外にもたくさんの新聞が届いていました。その家に新聞を届けるために、毎朝、たくさんの人がその家を訪れます。家の人とお会いしたことは一度ありません。雨の日も雪の日も、寝坊して遅刻した日も、決まって毎朝新聞を届け、そして、その新聞を読んでくれる。雪の日はよく転びました。転んでも痛くありませんが、雪の上をサーーーーとバイクがよく滑るので、新聞は雪まみれになります。それでも、そのまま配っていました。きっと、配達先家の方々は、濡れた新聞を見て、怒るよりも心配してくれていたと思います。

 

Jarvis君だったら、許してくれるかな?

 

新聞配達をしていて気をつけなければならないのが鴨。合鴨農法なので、田んぼの近くを走ると鴨がたくさんいます。もちろん、鴨が優先。どれだけ急いでいても、鴨優先です。鴨も賢いので、バイクの音を聞くと、どいてくれます。でもカラスや鳩のようにすばしっこくありません。お尻を振りながらのんびりのんびり退いてくれます。これもまた季節の趣。

 

暑い日も寒い日もあるから、季節の趣への喜びがあります。

 

さて、新聞配達や牛乳配達のビジネスモデルは、ネットや流通システムによって衰退期にあります。しかし、逆にネットや流通システムの普及によって、家にものを届けるというビジネスモデルが再び必要になっています。スーパーはオムニチャンネルで、商圏内の家庭に確実に商品を届ける流通網が必要になっています。以前は一の市や夕方のセールで、主婦がまとめて買いに来てくれましたが、今はみんな忙しい。ネットでクリック&クリックです。

 

時流は常に変わりますが、根源的な価値は変わりません。業態は徐々に転換していかなければなりませんが、家庭向けデリバリが不可欠であることは普遍。台湾の人々が感謝したほど、家庭向けのデリバリには価値があります。高齢社会が進み、買い物に行けないから届けて欲しいというニーズもあれば、配達員をするといい運動になって健康になるというシーズもある。

 

Jarvisの時代だからこそ、家庭向けデリバリはますます重要なビジネスモデルになっていくのではないかなと思います。

2016-12-25 | Posted in BlogNo Comments » 

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