信頼 -trust-
資本主義は、頑張った人が、頑張っただけ報われる制度だと思います。
社会主義は、人を階級などで判断するのではなく、公平に配分する制度だと思います。
社会主義では、働いても、働かなくても、所得は変わりません。
だから人々は怠惰になり、国家は貧しくなる。
資本主義では、競争原理が働き、勝者と敗者が生まれる。
勝っても、負けても、どちらも頑張るから、生産活動は活発化します。
おそらく勝った方が、その生産活動から生まれた付加価値を、
負けた方の分まで、手に入れることができます。
この考え方ならば、勝ち続ければ、富を手に入れ続けることができるので、
みんなが勝とうとします。
勝負する必要のない時も、なぜか、勝とうとする。
競争原理は生産活動を生み続けます。
今も、世の中には課題だらけ。
その課題を解決することで、その市場では勝者の地位を手に入れることができるので、
人々は、永遠に生産活動を続けるでしょう。
先進国の人々は十分お腹がいっぱいになりました。
お腹がいっぱいになると、無理に競争しなくても、生きていけます。
今のままでいいか、それとも競争を続けるか、それは、自分の中にある欲の大きさ次第でしょう。
先進国の中では、欲の大きい人と小さい人の間で格差が生まれる。
一方、途上国の人々は、まだお腹が空いている。
だから、途上国の人々は、みんな、競争を続ける。
明日、お腹いっぱいになるために、1年後お腹いっぱいになるために、
10年後お腹いっぱいになるために。
こうして、資本主義と社会主義との間では大きな差が生まれ、
ソ連が崩壊し、中国も社会主義市場経済を導入します。
そして、競争は破壊を生み、大地の恵みも、地球の治癒力も奪うようになりました。
資本主義は、このままでいいのか、という議題が各地で持ち出されるようになり、
資本主義は必ず崩壊するという警告を発する偉大な先生達がたくさんの論文を出しています。
そんな中での、昨年末のパリ協定の奇跡。
北も、南も、競争ではなく、搾取ではなく、未来に向かって地球一丸となって同じ方向に向かうことを合意しました。
批准が遅れている日本ではあまりパリ協定は取り上げられていませんが、アメリカも、中国も、EUも、世界中がパリ協定に熱狂しています。
アメリカ、中国、EUが批准した中、出遅れた大国ロシアと日本が批准すれば、パリ協定の実効性は間違いないと言えます。
資本主義が生んだ不平等を、競争原理ではなく、コンパッションが克服した最初の成功例といえるでしょう。
なぜこのような奇跡が起こったか?
それは、世界中で、地球環境破壊への危機感が共有されているからだと思います。
ではなぜ、地球環境破壊への危機感が共有されているか?
それは、本当に危機であるからであり、そのことに正面から目を向けている人が、
そのことに正面から目を向けることを職業とする人だけでなくなったからだと思います。
アル・ゴア元アメリカ副大統領、メアリー・ロビンソン元アイルランド大統領の影響が大きいでしょう。
アメリカやヨーロッパでは、農家も、工場労働者も、商店も、旅館も、レストランも、スポーツジムのトレーナーも、このままで地球は大丈夫か?と思うようになりました。
そして欧米で教育を受けた中国のエリート達、中国で世界の将来を真剣に考える指導者達が、中華思想を持ちながらも地球の将来を考えるようになりました。
みんなで、地球を保護していこうと。
おそらく、この意識をもつ人が、いつの日かを起点に、地球の人口の一定基準を上回ったのでしょう。
資本主義や社会主義が前提としていた、「他人は信用できない」「人々は元来怠惰である」という条件を、覆すような「信頼」を前提としたビジネスモデルが誕生しています。
ひと昔前は、「UBER」や「Airbnb」のようなビジネスモデルは「危険」と思われたでしょう。
しかし、人々は、サービスを提供する側にも、対価を支払う側にも対等に敬意を払うようになりました。
ホテルでは、チェックアウト前にベッドやリネンを綺麗にしない人も、Airbnbでは、部屋を掃除してから退出します。
お互いの信頼の構築と維持が、自身の怠惰に打ち勝っています。「UBER」の方が安くて便利だから「UBER」が必要と考えている人は、少ないでしょう。「UBER」が社会的な課題、それも、競争原理の為に生まれてしまった課題を解決できることに期待している人が多いと思います。
「小遣い稼ぎにUBERでもしよう」、ということをきかっけに、「おいおい、UBERって何か今までになかった体験を得られるぞ、人間って実は素敵だな」、って多くの人が思うようになっていると思います。
これからのビジネスモデルは、いかに市場を支配するかではありません。
いかに、人々の信頼をつくることができるか?
それも、自社とユーザーとの信頼ではなく、ユーザーとユーザーとの信頼を作ったビジネルモデルが成功するでしょう。
考えてみれば、Facebookもそうです。
なぜ、未だに「サトシ・ナカモト」は、人々の前に現れないのか?
あるいは、すでに現れているのに、正体を明かさないのか?
その答えは、重要なのは、「テクノロジー」ではなく、「信頼」だからでしょう。