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猪木武徳著「戦後世界経済史」に以下の通りの記載があります。

 

『交換と交易が文明を生み出すことは確かだが、モンテスキューもスミスも商業社会の欠陥に気付いていた。スミスは市場の拡大や商業の発展は、人々を単純な作業に集中させ、思考範囲と視野を狭くするため、人間を愚かにすると言い切っている。ここに奇妙なパラドックスが存在する。人類は知恵を用い、知恵を開発し、情報を収集・散布しながら高度の技術を開発して巨大な富を創造してきた。市場は拡大し、貿易のネットは地球を完全に包んでいる。しかしその過程で、我々の視野は狭くなり短期化し、お互いの信頼感を弱めるような風土を作り上げた。』

 

とても共感します。

 

世界はどんどん複雑になり、その複雑な世界で生きて行くためには、専門特化するしかなくなっている。専門特化すればするほど、視野は狭くなっていきます。

 

Who are you ? とWhat are you doing?の境目がわからなくなってきている。

doingがその人の価値を決めるような時代になっています。

これは明らかな間違い。

Je pence, donc, Je suisです。何もしていなくても、人々は常に感じ、常に考えています。

 

 

さて、グローバル市場で成功している企業には、「単純化」させることに成功した企業が多いと思います。

 

グローバル市場は、多様な市場。

 

その多様な市場で受け入れられるためには、その市場毎にあった個別の取り組みをするのではなく、むしろどの市場にも当てはまるほど、極端に単純化して、あとは市場の参加者が勝手に微調整してくれるようなビジネスモデルが成功しています。

 

Facebookは同級生や仲間達のつながりという、どの国の人々がしていることを、ITをつかった新しい技術でシンプルに実現しました。人である以上備えている「欲求」を対象として、その使い方を各国の利用者に委ねることで成功したビジネスモデルだと思います。

一方、FacebookがConsumerをターゲットとしているのに対して、LinkedinはProfessionalをターゲットにしました。

Professionalには英語を使う人が多いので、各国の市場に委ねる必要はなく、むしろ細分化されたprofessinal同士がグローバル市場で交流できるという単純化したビジネスモデルを提供し、参加者が勝手に自動車やエネルギーなどそれぞれの専門分野のネットワークを構築することで新しいビジネスモデルを形成しました。

 

このプラットフォームビジネスモデルは、これからどんどん細分化された形で誕生していくでしょう。

 

BtoBとかBtoCとかそういった言い方でビジネスモデルを分類する人もいますが、少なくともプラットフォームビジネスでは Business to Business という考え方は通用しないでしょう。

誰もがプラットフォームに参加する資格を与えられており、誰もが、何かしらの欲求をもってプラットフォームに参加しています。

あなたはB、あなたはCのような指定をする権利は、誰に与えられていません。と、いうか、オープンプラットフォームには、その管理人の顔も出てきません。ルールを決めるのは、あくまでシステムの仕組み。ルール違反しても「レッドカード、あなたは退場してください」、といったことを言う人もいません。

 

UberやAirbnbは、Cだった人をBにしたとも言えます。iPhoneのアプリは、Bの人もCの人も開発しています。LINEのスタンプになると、Cの人が多いか?Etsyは、Cの人がBとしてデビューするきっかけになっている。まあ、いずれにしても、こういった分類の仕方はくだらないですね。

 

重要なのは、今、グローバル市場において、誰もが参加資格を与えられ、そして単純な活動で、見えない不特定多数の人々に認められることができる機会を提供する、オープンプラットフォームを世の中に登場させた企業が莫大な収益を手にするようになっているということ。

 

Professionalの数は限られているのに対して、Consumerは全世界の人口分います。その人達ができるだけ多く参加して、参加した人がそのプラットフォームでビジネスをして、儲ければ儲けるほど、プラットフォームを作り出した人には収益が落ちる。

 

そう考えると、誰もが使っている物で単純化したオープンプラットフォームを提供した人に収益が落ちると思います。アップルは、電話という誰もが使っているものを舞台にオープンプラットフォームを提供しました。電話の次に、IOTでプラットフォームの主役になるのは何か?

 

多くの企業が、それを自動車と考えています。

自動運転自動車が誕生した時、その自動車は移動が目的だけではないと思います。きっと、様々なコンテンツが活躍する。それが、アプリなのか、スタンプなのか、ナビなのか、ポイントなのか、それはわかりませんが、自動運転自動車というオープンプラットフォームにコンテンツを提供する資格は、全世界の人に与えられると思います。

 

でも、しつこいようですが、私は、オープンプラットフォームの舞台は、自動車でなく、自転車であるべきだと、思っています。

 

 

 

2016-10-09 | Posted in BlogNo Comments » 

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