経験 -experience-
責任ある仕事につくほど、自然と読書量は増えていきます。
忙しくなると立ち読みする時間がなくなるので、とりあえず本を買って、
そのままさらっと読んで、あとは読まないというケースが増えます。
家にはどんどん本が溜まっていく。
数年たって、溜まった本をさすがに捨てなきゃなって整理していると、
あれっ、こんな本あったんだと思って読むと、その時の自分にとても必要な内容だったりする。
最近、これまであまり触りたくなかった溜まった本の中から、
何かしらの重大な学びを得ることが多いように感じます。
そもそも、最初から関心があって買った本です。ただ読まずに置いておいただけ。
実は、時間が経ってから読んでみると、すごく重要な内容。
買った時の自分よりも、今の自分が成長しているから、その重要なことが分かるだけのこと。
最近、講演を聞く機会が増えました。
新聞に講演の案内が記載されていると、すごく話を聞いてみたくなります。
この人は、どういうことを考えているのだろう、ということにすごく関心があります。
私は大学を卒業してから10年間、商社でお世話になりました。
商社では、仕事が終わると毎日お酒を飲みに行きます。
お金は会社が出してくれます。
それが、働いている間、不思議で仕方がありませんでした。
なぜ毎日会社がお酒を飲むお金を出してくれるのか?
毎日お酒を飲んでいるので、勉強できません。
他の会社に行った高校や大学の友人たちは、毎日会社終わっていろいろ勉強しているので、
あせりました。
こんなに毎日お酒飲んでいて大丈夫か?
と思っていました。
しかし、今、講演をお金を払って聞いていますが、
商社時代に毎日お酒を飲みに行って、
社内や取引先の大先輩から学んだ話に勝てる内容はありません。
読まずに溜まっていた本を読み返した時と同様です。
こんな重要なことを、大先輩から昔、直接教えてもらっていたんだと、思います。
どれだけ本を読んでも、どれだけ経験を積んでも、
大先輩から若造への直接の説教ほど、貴重な話はないでしょう。
経験は、人を成長させます。
成長とは、学ぶこと。
自分で経験をしなくても、人の経験を聞くことで、たくさんのことを学ぶことができます。
でも、人の経験から学ぶことと、自分自身が経験することには、距離があります。
本を読むのはその距離が一番遠く、
講演を聞くのはその次に遠く、
直接話をすることが、最も近い。
自分の経験と距離が近いほど、自分の経験に取り入れることができることが多いと思います。
人生、時間は限られています。
どれだけたくさんの時間、直接、人から経験を学ぶ時間を持つことができるか。
今になって、10年間お世話になった商社が、
一番必要な時に、一番重要な、かけがいのない学びの機会を提供してくれたんだ、ということを
今になって気が付きます。
商社に恩返しができないまま、もっと自分を成長させたいという未熟な発想のまま、
転職してしまいました。
転職してよかった部分も、よくなかった部分も、どちらも少なからずありますが、
確実なのは、今更仕事で商社に恩返しすることはとても難しいということ。
だから、自分がしてもらったように、逆に、経験で、商社に恩返しをしたいなあと思っています。
そのためには少なくとも、私の話を聞くことが時間の無駄と思われるのではなく、
この人の話を聞きたいと思われるような存在にならないと。
すべての人にとって、自分が成長することが、すべての恩返しに繋がるんだな、と思います。
そういえば、商社の大先輩から、恩を受けた人に対して直接する恩返しだけでなく、
恩を受けた内容を、他の人に返す、恩送りも、立派な恩返しだと、教えられました。
言い訳抜きに、目指すべき内容だと思います。